テクノロジー

2026.04.05 22:43

ソーシャルメタバースの終焉が切り拓く「実用的な仮想空間」の未来

Diego - stock.adobe.com

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先週、メタバースはおよそ100万回目の「死亡宣告」を受けた。今回の発端は、MetaがHorizon WorldsのVR版を終了するという報道だったが、その後CTOのアンドリュー・ボズワースによって後退修正された。本稿執筆時点では、従来のHorizon WorldsのコンテンツはVRで引き続き利用可能だが、Metaは新規コンテンツの開発は行わない方針だ。もっともMetaのことだから、この状況はあっという間に変わり得る。

この苦境の多くは自業自得だった。Horizon Worldsがもう少し早く本格展開できていれば、コロナ禍の真っ只中にリリースし、誰もが外出できず人との接触を断たれていた状況を活かせたはずだ。アバターが「次善の策」として受け入れられていたかもしれない。しかし、ソーシャルメタバースは大部分において、問題を探し求める解決策でしかなかった。確かに活気あるコミュニティがいくつか生まれたものの、ほとんどの仮想世界は、経営陣が「イノベーティブだ」と主張するための形式的な取り組みとして構築されたにすぎない。

私は2021年から2023年までMetaで働いていたが、Horizon Worldsで過ごした時間はすべて自発的なものだった。従業員がプラットフォームを理解すべきだという経営層からの指示は一切なかった。業務ツールであるHorizon Workroomsも社内で定期的に使用されることはなく、私が在籍中に使ったのは、別のチームメンバーにデモを見せた1回だけだ。Meta自身の従業員が製品を使っていないのに、なぜ他の人々がアバターを作成してヘッドセットを装着すると期待できるだろうか。

しかし逆説的に言えば、Metaの撤退は長期的には良いことでもある。なぜなら、仮想コメディクラブの「足のないアバター」を人々がからかうのと並行して、別のメタバースが育ってきたからだ。そしてこちらのバージョンは、はるかに有用で強力である。「フィジカルAI」や「ワールドモデル」といった言葉も使われるが、要するに同じテーマの変奏にすぎない。物理空間のデジタルツインだ。

この市場は必ずしも一般消費者向けではないが、その規模は巨大になるだろう。ロボット工学の進歩と、それを動かすために必要な現実世界の学習データ量について考えてみてほしい。LLM(大規模言語モデル)がこれほど強力なのは、30年分のインターネットデータで学習されているからだ。一方、空間データの蓄積ははるかに遅れている。これは特に「エッジケース」(想定外の状況)において顕著であり、ロボットがあらゆる状況に対応できるよう訓練することが極めて重要だ。LLMがユーザーに「その質問の答えはわかりません」と言うのは一般的に問題ないが、ロボットが見慣れない環境でフリーズすれば危険、あるいは致命的な事態になりかねない。Waymoは概して非常に安全だが、エッジケースではフリーズすることがある。数カ月前にサンフランシスコで大規模停電が発生した際の反応がその証拠だ。

近い将来、食品配達から家事まであらゆる分野でより多くのロボットが市場に投入されるだろう。短期的には、これらのロボットはヘッドセットを装着した人間によって操作される可能性が高く、これは関係者全員にとってメリットがある。配達員にとってはより良い労働環境、消費者にとってはより低いコストだ。これらのヘッドセットから生成されるデータは大規模モデルに取り込まれ、悪天候や工事現場といったほとんどのエッジケースに対応できるようになる。

さらにスマートグラスをかける人が増えれば、自分の環境を捉え、モデルを学習させられるようになる。あらゆる建物がデジタルツインを持ち、それが特定の作業を行えるロボットと組み合わされる、という未来も荒唐無稽ではない。普遍的な3Dデータは、最も価値のあるデータの一つになっていく。

デジタルツインと仮想世界は、物理世界が建設される前の段階でも応用できる。仮想世界を作り、さまざまな人々がその中を歩けるようにすることは、アクセシブル(利用しやすい)でインクルーシブ(包摂的)なデザインにとって大きな前進となる。着工前に、人間が道路や建物と実際にどう相互作用するかをリアルタイムで研究できれば、より賢く、より良い都市を建設できる。

私たちが近いうちにソーシャルメタバースで多くの時間を過ごすことはおそらくないだろうが、それで構わない。実用的なユースケースが明らかになるためには、過熱と虚飾が収束する必要があった。ソーシャル世界を築いた有能な人々は、今やロボティクス企業や都市計画者に資するプロジェクトへと焦点を移し、やがて私たちの生活をより良く、よりシームレスなものにしていける。足のないアバターが漂ったからこそ、いつかあなたの家を掃除するロボットは走れるようになるのだ。

forbes.com 原文

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