経営・戦略

2026.04.04 21:51

「誇大宣伝」から「真の変革」へ──企業を動かすAIの実力

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ここ数年、AI技術と職場におけるその活用は、ビジネスリーダーにとって最大の関心事の1つとなっている。筆者の会社であるProsper Insights & Analyticsが実施した最新調査では、調査対象となった経営幹部および企業オーナーのほぼ半数(48%)が、すでに生成AIを利用していることが分かった。

用途としては、調査(50.4%)や、スケジュール管理やリマインダー設定といった基本的な事務作業(25.6%)など、業務アプリケーションで活用している。

企業は、OpenAIのChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotといった生成AI技術の導入に加え、業務機能全体でエージェント型AIへの投資と実装も拡大している。MIT Sloan Managementの記事によれば、過去2年間で35%の企業がすでにエージェント型AIの機能を導入しており、44%が導入を計画しているという。

企業内でAI施策を成功裏に実装するには、機械学習とディープラーニングの双方の能力を備えた計算レイヤーを持つエンタープライズプラットフォームに加え、プラットフォームのナレッジモデルへ接続できる、整備された社内外データセットに依拠する必要がある。これが、効果的なエンタープライズAIアプリケーションの基盤となる。さらに、企業は組織知(制度知)のデジタル化にも注力しなければならない。これにより、AIエージェントに、その組織固有の文脈が提供されるためだ。加えて、特定の事象がなぜ起きたのか、どのような意思決定がなされ、どのような結果に至ったのかを、チームが効果的に事後分析する方法も考慮すべき要素である。そうした重要な学びを、成果の継続的改善に生かせるからだ。

すでに複数業界の企業が、組織内にAIと機械学習(ML)の能力を実装することで成果を得ている。以下に、この技術を特定業界でどのように適用できるか、3つの例を挙げる。

食品小売(グローサリー)

食品小売分野でもAI導入の恩恵が出ている。o9 Solutionsでインダストリーソリューション担当シニアディレクターを務めるケント・エスリンガーによれば、地域特性に即したデータ駆動の品揃え最適化と、MLによる需要予測機能により、買い物客の体験を改善しつつ、食品小売事業者の損益(P&L)を大幅に向上させているという。さらにAI/MLは需要予測精度を高め、在庫水準の引き上げや生鮮品の廃棄削減といった具体的な効果をもたらす。AI対応プラットフォームは需要と供給をつなぎ、購買の自動化やネットワークフローの最適化、配送センターや店舗における労働力キャパシティの計画を可能にし、より簡素で統合的な事業計画プロセスを実現する。エンドツーエンドのデータ可視性を提供し、エージェント型AI技術を統合したプラットフォームであれば、さらに踏み込める。「エージェント層があることで、データと知識が民主化され、誰もがアクセスでき、どこにボトルネックがあるのか理解し、制約をどう解消するかについて非常に迅速に有効な意思決定ができる」とエスリンガーは言う。

AI能力への投資を継続することで、食品小売のリーダーは、インフレ、関税に伴うコスト、変化する消費者嗜好といった課題に、バリューチェーンのあらゆる結節点で応答性を高めながら、より適切に対処できるようになる。

小売

小売では、いまも多くの企業が手作業の計画・予測プロセスに依存しており、AI技術の採用は段階的に進んでいる。しかし、o9 Solutionsでインダストリーソリューション担当シニアディレクターを務めるアンジャリ・バーキンズは、デジタル化とAIに着実に投資してきた企業が、いま明確な優位性を持っていると指摘する。例えば、いまだに手作業の計画プロセスに依存する小売企業では、経営陣の戦略計画レポートに必要なデータを抽出し、その情報に基づいて意思決定するまでに、5時間以上かかることもある。

一方でAI対応プラットフォームを活用する小売企業は、需要シグナルをリアルタイムで確認し、より迅速に戦略計画の調整を行える。小売においてAI能力がゲームチェンジャーになりつつあるもう1つの領域が、在庫最適化である。小売のプランナーはバリューチェーンネットワークを端から端まで可視化し、需要に応じて供給をより適切に整合・統合し、需要シグナルに可能な限り近い場所へ在庫を移動できる。「これは極めて重要だ。特に『オンラインで購入し、店舗で受け取る』がより意味を持つようになる中でなおさらである。多くの[小売企業]がこのプロセスをかなり手作業で進めており、需要と供給が歩調を合わせて統合されていない」とバーキンズは語る。「オムニチャネルのフルフィルメント市場は非常に大きく、拡大途上の領域であり、誰が在庫を保有するのか、在庫がどこへ行くのか、良好な顧客体験を提供するためにどう効果的に履行するのか、といった点で、複雑さをさらに増している」

今後、小売のリーダーは、長期計画を強化し、予測、需要計画、そして組織全体にわたる協働的・戦略的な意思決定の取り組みにデータ駆動の洞察を組み込むため、AI能力への投資を継続していく必要がある。

自動車

自動車業界では、OEM(完成車メーカー)が高度なML能力を用いて需要計画プロセスと生産効率を改善している。これらのMLは、顧客センチメントや人口統計、GDP、インフレなど、追加の需要要因から得られるデータも統合でき、OEMが車種別需要をより正確に予測する助けとなる。さらに、AIによる分析は、スコアカード作成能力を強化し、需要が急変した際にサプライヤーの信頼性を示す自動インサイトを提供することで、サプライヤー管理の改善にも寄与する。これにより、OEMは需要増加時にキャパシティを満たせるサプライヤーをより適切に見極められる。

自動車のリーダーは、関税や通商の変化、想定される景気逆風、進化し続ける消費者需要や車両嗜好の変化にリアルタイムで対応するため、包括的なシナリオプランニングを実施する能力を強化するべく、AIの活用を引き続き進めていく必要がある。またOEMは、この情報を活用してサプライヤーとの協業も強化したいところだ。

総じて、AI能力を業務ワークフローやオペレーションに統合しようとするあらゆる企業にとって、そのプロセスはAI対応プラットフォームを導入する以前から始まっている。企業のリーダーはまず、AI技術を事業に統合するための明確な事業上の根拠を構築・定義し、AIの適用によってどの課題に対処したいのか、どのAIソリューションが最も有効なのかを理解し、進捗を追跡するために結果をどのように測定するかを決めるべきである。同様に重要なのは、組織全体の関係者から支持を得て、従業員の懸念に対処し、AIのパイロットと展開の各フェーズを効果的に伝え、組織全体の同僚やチームとより効率的に、戦略的に、協働的に働く機会を示すことによって、効果的なチェンジマネジメントを確立することである。

開示:上記で言及した消費者センチメント調査は、筆者の会社であるProsper Insights & Analyticsが実施した。このデータセットは全米小売業協会(NRF)でも使用されており、経済ベンチマーキングのためにAmazon Web Services、Bloomberg、ロンドン証券取引所グループから入手可能である。

forbes.com 原文

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