新たなキャッチ22(板挟みのジレンマ)
AIを優先してエントリーレベルの職を削減する動きは、Z世代にとってキャッチ22、すなわち解決の難しいジレンマを生み出している。かつては「エントリーレベル」と銘打ちながら2〜3年の実務経験を求めるという矛盾があった。今度は、企業がエントリーレベルという育成の場そのものをなくしておきながら、より上位の職には経験豊富な人材を求めるという新たな矛盾である。
エントリーレベルの仕事の大半がAIに置き換えられるなら、若者はどこで上位職に就くための実務経験を積むのか。AIは、人材育成における「見えない落とし穴」になっているのである。
筆者自身、最初のフルタイムの仕事で多くを学んだことを覚えている。大学での経験はすばらしいものだったが、最も実践的な学びは、熟練したプロフェッショナルのそばで指導を受けながら得たものだった。
コストの安いAIを優先してエントリーレベルの人員を徹底的に削った組織は、後になって、人的資本の面での代償が想定以上に大きかったと気づくかもしれない。エントリーレベルで実務経験を積む機会が失われれば、有能な人材の層はいずれさらに細っていく。
これでは持続可能な人材パイプラインは築けない。3年から5年後には、新たなスキルギャップが表面化するだろう。しかも今回は、企業自らが招いたものとなる。
Z世代の採用をめぐる課題
Z世代は、採用の場ですでに厳しい立場に置かれている世代でもある。パンデミックによる都市封鎖の時期に社会人としての形成期を迎え、キャリアの初期を在宅勤務で過ごした人も多い。その結果、対面での有意義なやり取りの機会を十分に持てなかった若手の中には、上の世代には理解しがたいほど職場でのマナーが身についていない者もいる。
AIを使った大量応募が可能になったことで、限られた職をめぐる競争はさらに激しくなっている。ようやく職を得ても、多くのZ世代は非現実的な期待を抱いて入社し、給与が十分でないことを理由に70%が1年以内に辞めている。
「手がかかる世代」という評判に加え、転職を繰り返しやすい傾向(「成長を求める転職」とも呼ばれる)もあるため、他の選択肢がある場合、採用担当者の多くはZ世代の候補者を避けるようになっている。
こうした要因が重なり、Z世代にとってはまさに「紛れもない嵐」のような状況が生まれている。実際、Z世代の60%が、住居費を賄えないために家族と同居していると答えている。


