マヘシュ・パガラニは、人々のクルマへのアクセスのあり方を変革するマーケットプレイスOneClickDrive.comの創業者兼マネージング・ディレクターである。
中東の自動車業界は動きが速い。ひしめき合い、競争が激しく、決して落ち着かない。大手レンタカー会社の多くは長年にわたり存在感を保ってきた。一方で、地場の小規模事業者は俊敏で柔軟であり、成長への意欲も強い。価格は頻繁に変動し、顧客はあらゆる点を比較し、期待水準は以前よりはるかに高い。
レンタカー事業において、所有はしばしば「支配」を意味してきた。企業は車両群を購入し、整備を管理し、人員を雇い、実店舗の拠点を運営する。考え方は明快だ。すべてを所有すれば、品質を管理できる。だが私がドバイでレンタカーのマーケットプレイス立ち上げを支援した際、私たちは最大の車両群や、クルマで埋まった倉庫を保有したいとは思わなかった。その代わり、車両供給者と顧客の間にデジタルの橋を架けるというシンプルな目標を掲げた。
車両を保有しないという選択は、当初はリスクに感じられた。目に見える車両群がなければ、どうやって信頼性を示すのか。どうすれば本気だと納得してもらえるのか。私たちは、自分たちのモデルが混乱ではなく明確さを生むことを証明しなければならなかった。そこで、構造設計、標準化された掲載情報、明確な料金表示、詳細な供給者プロフィールに注力した。
時間の経過とともに、供給者の思考や顧客とのつながり方、そして国境を越えて成長するために本当に必要なことについて多くを学んだ。また、信頼を得ることは一朝一夕にはいかないことも学んだ。必要なのは忍耐、一貫性、そして規律である。
主要なステークホルダーとの足並みをそろえる
初期における最も難しい対話の1つは、供給者とのものだった。多くのレンタカー会社は、顧客体験の各段階を自社でコントロールすることに慣れていた。マーケットプレイスに掲載するという発想は懸念を呼んだ。価格が押し下げられるのではないか。自社ブランドの可視性が失われるのではないか。コミュニケーションをコントロールできなくなるのではないか。
競争の激しい市場では、足並みをそろえることが重要だ。供給者は安定した需要を求めている。だからこそ私たちは、当初から自分たちの立ち位置を明確にする必要があった。私たちは、ゲートキーパーではなくインフラとして機能するのだと説明し、少しずつ語り口を変えていった。懐疑はやがて協働へと変わった。
新しいものをつくるとき、パートナーや供給者が最初は懐疑的になるのは自然なことだ。初期に役立ったのは、役割を最初から明確にすることだった。このプラットフォームは、彼らの事業を置き換えたり価格を支配したりするためのものではないと説明した。より高い可視性を提供し、より多くの顧客とつなぐために存在すると伝えた。発想を強く押しつけるのではなく、耳を傾ける時間を取った。供給者に、マーケットプレイスで何が最も不安なのかを問い、彼らの見方を理解しようと努めた。そのフィードバックが、システムの多くの部分をどう構築するかを形づくった。
自分の声が届いていると感じられれば、対話は進めやすくなり、信頼が芽生え始める。多くの場合、両者が長期的な便益を見通せるときにのみ、足並みはそろう。成長の新たな機会を得ながらも自分たちのコントロールが保たれるとパートナーが信じられれば、抵抗感は時間とともに薄れていくことが多い。私の経験では、必要なのは忍耐、誠実なコミュニケーション、そして道中で自らの前提を調整する柔軟さである。
顧客との信頼を築く
あらゆるマーケットプレイスにおいて、信頼はすべてである。
従来型のレンタカー会社は、実店舗の拠点やブランド化されたオフィスによって安心感を醸成できる。マーケットプレイスにはその強みがない。信頼は別の方法でつくらなければならない。私たちにとって、透明性は譲れない条件となった。情報が隠されると、人はためらう。開示されていれば、自信は育つ。
どの業界の創業者にとっても、透明性は、顧客との初期の信頼を築く最も強力な手段の1つである。いまの人々は素早く選択肢を比較するため、明確な価格、詳細な提供内容、率直な情報は大きな差を生む。
いまの顧客は慎重だ。選択肢を比較し、レビューを読み、決断する前に信頼性を確認する。私たちは、信頼は大げさなマーケティング上の主張によって築かれるのではないことを学んだ。現実が期待と一致したときに築かれる。顧客がオンラインで目にするものが、オフラインで体験するものと完全に一致するとき、信頼は増幅する。そしてデジタルビジネスでは、積み上がった信頼が長期的な成長となる。
国境を越えた展開
成長は魅力的に聞こえるが、新市場への参入が簡単なことはほとんどない。国によって規制は異なる。例えば私たちの業界では、デポジットの慣行が違い、レンタル期間も異なり、顧客行動も変わる。観光需要が牽引する市場もあれば、長期居住者が中心の市場もある。供給者の成熟度も、どこでも同じではない。
ある国の戦略を別の国へ、そのままコピー&ペーストすることはできない。私たちは地域ごとに、季節要因、旅行のピーク期、移動の習慣、価格感度を調べる必要があった。中核の原則は変わらない。供給と需要を効率よくつなぐことだ。
拡大にあたっては、スケーラビリティが単にスピードの問題ではないことを忘れてはならない。壊れずに適応できるだけの強さを備えたものを構築することだ。実行は、地域の現実を尊重しなければならない。
最終的に、競争の激しい地域で事業をつくることは、明確さを求められるということでもある。自分たちが本当に生み出している価値を理解することを迫られる。私たちにとって最大の教訓はシンプルだ。インパクトを生み、成功するビジネスを築くために、所有は必ずしも必要ではない。必要なのは構造である。足並みである。信頼である。



