3月21日、トゥールーズFCがFCロリアンを迎え、2万3014人の観衆の前で行われた一戦は、リーグ・アン第27節の試合だった。同時にそれは、スペイン発の取り組みがより大きな存在へと進化する瞬間でもあった。サッカーを通じたアクセシビリティの取り組みが世界規模へと広がり、これまで以上に大きなスケールでインクルーシブな競技環境の実現を目指すことになったのである。
World Football Summitと非政府組織Integrated Dreamsが立ち上げた「The Most Inclusive Match」は、スペインで3年間にわたり、クラブレベルでそのモデルが機能することを実証してきた。フランスは、それが国外でも通用するのか、そして単一クラブではなくプロリーグが牽引役になり得るのかを試す最初の舞台だった。スタッド・ドゥ・トゥールーズで示された答えは、いずれも「イエス」だった。
リーグレベルの支援が可能性を次の段階へ押し上げる
これまでの「The Most Inclusive Match」は個別クラブが主導し、2023年のレアル・ベティスを皮切りに、その後はアトレティコ・マドリード、レアル・ソシエダがスペインで実施してきた。だが今年は、フランスのリーグ・ドゥ・フットボール・プロフェッショネル(LFP)が関与したことで構図が変わった。アクセシビリティへのコミットメントがクラブ単位であれば影響は1つのスタジアムにとどまるが、リーグがそれを掲げれば、影響は競技全体に及ぶ。
「リーグが取り組みを主導すれば、そのインパクトは例外的な出来事ではなく、構造的かつ制度的なものになる」と、World Football SummitのCEO兼共同創業者であるマリアン・オタメンディは語る。「1クラブだけではなく、すべてのクラブに基準を示すことになる」
「The Most Inclusive Match」が始まる前から、LFPはアクセシビリティを正式な優先事項として掲げていた。リーグ・アンおよびリーグ2のクラブは、毎年アクセシビリティ監査の対象となっている。2024-25シーズンに導入されたクラブライセンス制度では、障害者リエゾン担当者の任命が必須となった。オンラインのチケット販売プラットフォームのアクセシビリティも、同じ枠組みで評価される。またLFPは、視覚障害のあるファン向けに調整した競技ガイドを4形式(点字、大活字、音声、ウェブ)で12年連続で発行している。
LFPが2025年4月から6月にかけて実施した最新のファン満足度調査では、障害のある観戦者とその同伴者から716件の回答を得た。座席へのアクセスとスタジアム入場の満足度はそれぞれ81%と77%だった。受付対応やホスピタリティの評価はより低く、改善項目として示された。
Integrated DreamsのCEO、ホセ・ソアレスは「リーグ・アンが自然な選択肢だったのは、ゼロからの出発ではなかったからだ」と述べる。「『The Most Inclusive Match』は、LFPの中に、自らの野心と整合する既存のコミットメントを備えたパートナーを見出した」
リーグ・アンという組織にとっても合理的だった。リーグ・アンのコミュニケーション兼CSRディレクターであるジェローム・ベライグはこう語る。「リーグ・アンはクラブとともに、意欲的なCSRアクションプランに取り組んでいる。環境と社会へのコミットメントを際立たせるために、共有戦略を共同で策定しているのだ。『The Most Inclusive Match』は、障害のある人々のために国内レベルでの専門性を示す機会であり、さらにこのノウハウを国際的に広く認知してもらうための機会でもある」
サッカーにおけるアクセシビリティ課題の規模
より広い文脈は厳然としている。世界保健機関(WHO)によれば、世界で13億人が何らかの障害とともに生活している。Centre for Access to Football in EuropeとAccessibAllのデータでは、障害のある人の50%がスポーツの生観戦を一度も経験していないことが示されている。Disability Policy Centreの調査では、英国で調査対象となった障害者の23%が、アクセシブルな交通手段が不足していることだけを理由にスポーツイベントへ行けなかったと回答した。
道義的な論点と並行して、商業的な論点も存在する。障害者のビジネス包摂に注力する英国のコンサルティング会社Purpleによれば、障害のある人の4人に3人が、アクセシビリティや顧客サービスの不備を理由に、ある事業者の利用をやめた経験があるという。Return on Disability Groupは2024年、家族や近しい関係者を含む世界の障害者市場が18兆3300億ドルにのぼると推計した。サッカーは、まだその市場にほとんど手を付けていない。
トゥールーズはいかにして「The Most Inclusive Match」を開催したか
スタッド・ドゥ・トゥールーズでは当日、アクセス可能なシャトルサービス、視覚障害のあるサポーター向けの音声解説、着用者がピッチ上を拡大して見たり、画面で視聴するのと同様の感覚で試合を見られるGiveVisionのスマートグラス、ニューロダイバージェント(神経多様性)のファンのための専用スペースなどが用意された。VIPラウンジは、自閉症の若者5人のために、親と教育関係者とともに全面的に提供された。
両チームの選手は、背中の選手名を外し、代わりに障害の異なるカテゴリーを表す7つのピクトグラムを配したユニフォームを着用した。パリ2024パラリンピックの金メダリスト、リュカ・マズールとフランス人女優マヤンヌ・サラ・エル・バゼがセレモニーのキックオフを務めた。
トゥールーズFCのCSR責任者マノン・ロンバールは、アクセシビリティがすでにクラブの運営モデルに組み込まれていたため、必要とされた施策の多くは大幅な社内再編を要しなかったと語る。GiveVisionのグラスと感覚スペースは新規導入だった。常設化するかどうかは、実際に利用したファンからのフィードバック次第である。
「私たちは『レガシー』について多く語り合った」とロンバールは言う。「強いCSR方針を持つことは、私たちのDNAの一部である。トゥールーズFCは常に、ピッチ外で地域とつながり、地元コミュニティの一員として能動的な役割を果たす活動を強く行ってきた。サッカーは、人々をポジティブなインパクト・プロジェクトの周りに集めるための素晴らしいツールだ。それを活用しないのは、市民としての責務を果たせないことになる」
そしてトゥールーズは、この試合を単発で終わらせるのではなく、始まりにしたいと考えている。「主な目的は、新たな取り組みを長期的に持続可能なものにすることだ」とロンバールは説明する。「ただ、解決策を恒久的に導入する前に、それが真のニーズに応えているかを見極めるため、利用者からのフィードバックが必要だ」
CSRの取り組みとして関与したリーグ・アンのパートナー
リーグ・アンの公式ネーミングライツパートナーであるマクドナルド・フランスは、試合に先立つ数日間にスタジアムで開かれた障害者向け就職フェアに参加した。「Équipier du match」プログラムを通じて、障害のあるクルーメンバーがセレモニーのキックオフのためにボールをセンターサークルへ運んだ。大会のメインパートナーであるエシロールは、キャンペーンのビジュアルアイデンティティに基づいた特注のマン・オブ・ザ・マッチのトロフィーをデザインした。
トゥールーズFCの財団会長シンディ・ジョンソン=トゥフィは、商業的な枠組みについて率直に語る。アクセシビリティは直接的な収益ドライバーではなく、感覚ルームを追加したからといってスタジアムが満員になるわけではない。しかし、ピッチ上の結果にかかわらず、パートナーや地域社会との長期的な関係を強化する。
フランスの先にある野心
WFSとIntegrated Dreamsが描くビジョンは、世界のすべてのプロサッカーリーグが、各シーズンに少なくとも1回はインクルーシブな試合日を開催することだ。フランスは、その役割を引き受けた最初のリーグである。モデルが維持されるなら、最後のリーグにはならないだろう。
「各回の実施から、私たちは何か新しい学びを得ている」とオタメンディは言う。「『The Most Inclusive Match』は生きたプロジェクトであり、国際化は到達点ではない。もっと長い旅路の次の一歩だ」
その旅が次にプレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエAへ到達するかどうかは、フランスのLFPが示したのと同じ構造的なコミットメントを担う意思のあるリーグレベルのパートナーを見つけられるかにかかっている。トゥールーズでの実施は、その必要性を立証するために設計された。



