経営・戦略

2026.04.03 22:06

OpenAI、PE各社に17.5%の利回り保証を提示──アンソロピックとの企業向けAI競争が激化

prima91 - stock.adobe.com

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OpenAIがプライベートエクイティ(PE)各社に対し、優先株式として一般的な水準を大幅に上回る17.5%の最低利回り保証を提示していることが明らかになった。新たなエンタープライズ向け合弁事業の販売パートナー獲得を急ぐ同社の動きを、ロイターが本日報じた。同社はまた、一般公開前のモデルへの早期アクセスも約束しており、TPGやアドベント・インターナショナルが取引の対象として挙げられている。

この合弁事業は3月16日にロイターが最初に報じたもので、プレマネー評価額は約100億ドル(約1兆5000億円)とされる。PE投資家は合計で約40億ドル(約6000億円)を出資し、株式持分と取締役会の議席を得る見込みだ。TPGがアンカー投資家となり、アドベント・インターナショナル、ベインキャピタル、ブルックフィールド・アセット・マネジメントが共同創設パートナーとして参加する予定である。

競合のアンソロピックも構造的に類似した取り組みを進めており、ブラックストーン、ヘルマン&フリードマン、ペルミラに対して独自のエンタープライズ向け合弁事業への参加を働きかけている。しかし情報筋によると、アンソロピックの提案には同等の金融保証が含まれておらず、この差がPE資本とエンタープライズ市場シェアをめぐる直接対決の競争条件を規定している。

なぜPE各社なのか、なぜ今なのか

この戦略はAI業界では新しいアプローチだ。両社がバイアウトファームに働きかける理由は、PE各社が大規模な既存企業ポートフォリオを支配し、それらの企業がソフトウェアやテクノロジーにどう予算を配分するかに直接影響力を持っているからだ。合弁事業の仕組みにより、OpenAIとアンソロピックは案件ごとのエンタープライズ営業サイクルを迂回し、数百の法人顧客に同時にアクセスする近道を得られる。

「できるだけ多くのエンタープライズ顧客、できるだけ多くの"席"を押さえ込む大競争が起きている」と、ボストン・コンサルティング・グループのAI部門のマット・クロップ氏は語った。一度カスタマイズされたAIモデルがクライアントのシステムに統合されれば、競合への乗り換えは格段に難しくなると同氏は付け加えた。

合弁事業の仕組みは社内の財務目的にも役立つ。エンタープライズ顧客向けにモデルをカスタマイズするためのエンジニア配置には、多額の先行コストがかかる。これらのコストを別途資本化された事業体を通じて処理することで、両社のバランスシートへの短期的な圧力が軽減され、よりクリーンなセグメント報告が可能になると、協議に詳しい2人の関係者がロイターに語った。この報告の明確さは重要だ。OpenAIとアンソロピックはともに早ければ今年中のIPOを検討しており、適切に構造化されたエンタープライズ部門はIPOのストーリーを支えることになる。

提案の背後にある財務状況

OpenAIが17.5%の最低利回りを保証する姿勢の背景には、多額の損失という財務状況がある。社内予測によると、同社は2026年だけで140億ドル(約2兆1000億円)の損失を計上する見通しだ。2025年の年間売上高は200億ドル(約3兆円)を超え、前年比233%増となったにもかかわらずである。同社は2029年まで黒字化を見込んでいない。

OpenAIは2026年初めに1100億ドル(約16兆5000億円)を調達した。内訳はアマゾンから500億ドル(約7兆5000億円)、ソフトバンクから300億ドル(約4兆5000億円)、エヌビディアから300億ドルである。PE向けの合弁事業はエンタープライズ流通を目的とした別個のビークルであり、主要な資金調達手段ではない。それでも、保証リターンの仕組みは、合弁事業の業績にかかわらず、OpenAIが一定の資本コストを大規模に負担することを意味する。

アンソロピックの財務状況は異なる。同社は2026年2月にシリーズGで300億ドル(約4兆5000億円)を調達し、評価額は3800億ドル(約57兆円)に達した。また、2026年の社内売上目標を最大180億ドル(約2兆7000億円)に引き上げた。メンロ・ベンチャーズのデータによると、同社のエンタープライズ市場シェアは2025年に18%から29%に拡大し、フォーチュン10企業のうち8社を顧客に持つという。

すべてのPE各社が納得しているわけではない

世界最大級のソフトウェア特化型バイアウトファームであるトーマ・ブラボーは、マネージングパートナーのオーランド・ブラボー氏が主導した社内協議の結果、参加を見送った。ロイターによると、ブラボー氏は合弁事業の長期的な収益性に疑問を呈し、同社のポートフォリオ企業の多くがすでに独自にAIツールを導入していることを指摘した。トーマ・ブラボーはコメントを控えた。

より広い意味で、前提そのものに疑問を投げかける投資家もいる。複数の大手PE各社は、資本を拠出しなくてもOpenAIとアンソロピック双方に直接アクセスできており、正式な合弁関係を結ぶことによる追加的価値が不明確だという。さらに、テクノロジー企業の評価額に下押し圧力がかかる中、こうした合弁事業がAIツールへのアクセスを実質的に変えたり、その仕組みが示唆する追加収益を生んだりするとは限らないとも指摘している。情報筋はまた、経済的な妥当性とは別に、バイアウトファームが信頼できるAI戦略を示すようLP(リミテッドパートナー)から圧力を受けていることが、関心を後押しする要因だとも述べた。

ロイターによると、投資条件には他の合弁パートナーに対する優先権とダウンサイド・プロテクションが含まれている。取締役会の議席や主導的役割を持たない、より小規模な出資を検討している企業も複数あるという。

より広い競争環境

PE各社への働きかけは、両社の対立が先鋭化する中で展開されている。2月下旬、アンソロピックは2億ドル(約300億円)規模の国防総省契約の可能性から撤退した。同社のClaudeモデルが完全自律型兵器システムや大規模な国内監視に使用できるかどうかをめぐる交渉が決裂したためだ。国防総省はこれに対し、アンソロピックを国家安全保障上のサプライチェーンリスクに指定するという、米国のテクノロジー企業に対しては前例のない措置を取った。その数時間後、OpenAIは独自の条件で国防総省と合意に達したと発表した。

この一件はOpenAIにとって目に見える消費者面での影響をもたらした。発表後の数日間でChatGPTのアンインストールは295%急増した一方、Claudeは米国アプリストアのダウンロードチャートでトップに躍り出て、アンソロピックは過去最高の新規登録を記録した。アンソロピックはその後、国防総省のサプライチェーンリスク指定に異議を申し立てる訴訟を起こしている。

エンタープライズ合弁事業をめぐる競争は、この状況に対するOpenAIの対応の一環である。アンソロピックは従来からエンタープライズ分野で優位に立っており、OpenAIがこのセグメントに注力し、競合が追随困難な金融条件を設計していることは、同社がこの領域で直面している競争圧力を反映している。

forbes.com 原文

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