サイエンス

2026.04.07 18:00

頭を覆う透明なドームの中に、真上に向いた目を持つ深海魚「デメニギス」

3dsam79 / Gwtty Images

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深海がしばしば「トワイライトゾーン」と呼ばれるのには、それなりの理由がある。地球上で最も視覚的に過酷な環境の一つだからだ。それにもかかわらず、深海にはどういうわけか、脊椎動物で最も視覚に特化した種がいくつか生息している。ニギス科のデメニギス(学名:Macropinna microstoma)もその一つだ。

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この奇妙な姿をした魚は、海の最も暗い深淵で視界を確保し、生き延びて繁栄するため、目の位置や保護方法、そして使い方を根本から再設計せざるを得なかった。こうした驚くべき進化の偉業をどのように成し遂げたのか、そして何より、なぜそうしたのかを理解するには、まずは、生息環境としての深海の問題点から考えなければならない。

深海の魚として生きる難しさ

水深およそ600~800mの海中では、光は極めて乏しい。わずかな光がなんとか届いたとしても、そのほとんどは特定方向からのものに限られる。唯一、一定して差し込むのは上からの光で、かすかな陽光が水柱を通り、薄くおぼろげな光の帯となって降り注いでいる。

光の不均一さゆえに、深海は極めて特異な視覚環境となっている。獲物は、上から差し込む薄暗い光に照らされ、シルエットとして浮かび上がる傾向がある一方で、一部の生物は生物発光によって闇を彩る。コントラストは低く、動きも微細だ。捕食者が気づかなかったものは、すべて闇の中に消え去ってしまう。

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こうした環境下で狩りをする生物にとって、視覚への要求は極めて厳しい。光に対する並外れた感度が必要であるだけでなく、常に正確な方向を見据えられなければならない。デメニギスは、これら両方の問題を解決するため、ある極めて特異な解剖学的特徴を進化させた。それは、目を真上に向けることだ。

デメニギスは視覚の問題をどのように解決したのか

採取されたデメニギスの仲間(NOAA)
採取されたデメニギスの仲間(NOAA)

デメニギスの最大の特徴は、筒状の目だ。長く円筒形の構造をしており、樽(たる)に似ていることから、その名が付いた(デメニギスの英名はBarreleyeで、「樽のような目」という意味を持つ)。

ほとんどの魚は、目が横向き、つまり両側を向いている。一方、デメニギスの目は真上を向いている。これにより、頭上を見渡し、自分とかすかな光のあいだを何かが通り過ぎないかを確認できる。

この独特な目の向きは、その瞬間に目が集められる光の量を最大限に増やす。同時に、筒のような形状が、光子を導いて、極めて高い感度を持つ網膜へ向かわせることで、その効果をさらに増幅させる。

何十年ものあいだ、この目は、常に上を向いた状態で固定されていると考えられていた。もしそれが事実だとすれば、ある不都合な疑問が残る。もし上しか見ることができないのであれば、実際に獲物を捕らえようと近づいたとき、一体どうやって獲物を見るのだろう?

米モントレー湾水族館研究所の研究者たちは2008年、遠隔操作型探査機(ROV)と綿密な生体観察を用いて、この疑問に答えを出した。『Copeia』誌に掲載された研究論文で説明されているように、その目は全く固定されていないことが判明したのだ。研究者たちを驚かせたのは、デメニギスが筒状の目を頭の内部で回転させ、真上から正面まで、難なく視線を向けられるとわかったことだ。

この発見によって、デメニギスの解剖学的特徴は、矛盾に満ちたものから、設計の傑作へと一変した。この仕組みを用いて、デメニギスは狩りを2つの明確な段階に分けている:

1. まずは、目を上に向け、じっと浮かんだまま、獲物のシルエットや、生物発光の揺らめきを探し求める

2. 獲物を見つけると、確実に仕留めるため、視線を前方に向ける

一見すると致命的な制限のように思えたものが、実は極めて効率的な二段階の視覚システムだったのだ。

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翻訳=米井香織/ガリレオ

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