気候・環境

2026.04.24 13:15

見過ごされてきた「水」の危機 デジタル経済への影響は

(C) Conservation International/photo by Johnson Rakotoniaina

ローカルな資源から「グローバルな公共財」へ


水の経済学に関する世界委員会(Global Commission on the Economics of Water)の最近の報告書は、厳しい警告から始まっています。

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人類は水の「利息」ではなく「元本」を取り崩して生活しているというのです。河川、地下水、湿地は、再生が追いつかない速さで枯渇しています。国連大学の主要な報告書は、世界の多くの流域がすでに「水の破産」状態に陥っていると警告しています。つまり、社会が水の管理と価値評価の方法を抜本的に変えない限り、かつての水準に戻ることはできないということです。

都市化、森林破壊、大規模インフラといった人間の活動がこの変化を加速させ、水がどこを流れ、いつ届き、どれだけの期間留まるかを変えてしまっています。数十年の間、水政策は水道管やダム、処理施設に焦点を当ててきました。しかし同委員会は、それではもはや不十分だと主張します。森林や湿地のような「自然のインフラ」や、上流での土地利用のあり方が同等に重要となっているのです。

科学者たちは、大陸を移動する湿気の流れを「空飛ぶ川」と表現します。アマゾンの森林が遠く離れた農地に雨を降らせ、東南アジアでの土地利用の決定が東アジア全体の天候パターンに影響を及ぼします。したがって、日本の水安全保障は、ブラジルの大豆畑からインドネシアの森林まで、国境をはるかに越えた生態系と結びついています。

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貿易に組み込まれた仮想水と同様に、これは水が単なるローカルな資源ではなく、食料システム、エネルギー、経済に連鎖的な影響を与える「グローバルな公共財」であることを示しています。

水をグローバルな公共財であると宣言することは、意思決定のあり方を変えます。それは、いかなる企業、都市、国家も単独で水リスクを管理することはできないと認識することを意味します。投資、価格設定、土地利用の選択は生態学的な限界を反映しなければならず、協力は制約ではなく「レジリエンス」の源となります。同委員会は、この転換がなければ、水不足と汚染は単なる環境問題にとどまらず、経済的・地政学的な問題としてますます顕在化していくだろうと主張しています。

デジタル経済が求める水需要

AI利用が間接的に消費する水の量は目に見えにくいものですが、瞬く間に積み上がります。データセンターの設計や冷却方法にもよりますが、研究者の推定では、数十回のAIクエリが、サーバー冷却に使われるコップ一杯分(約250ml)の水に相当します。規模が大きくなれば、その数字は急速に膨らみます。

単一の大規模なAIモデルを学習させるには数千万から数億Lの水が必要になる可能性があり、ハイパースケール・データセンターの取水量は、小さな町の需要に匹敵する一日あたり数百万Lに達することもあります。

テック企業も対応を始めています。マイクロソフトは2030年までに「ウォーター・ポジティブ(水収支をプラスにする)」を実現することを誓約しました。これは、水ストレスを抱える流域において、自社が消費する量以上の水を補充することを意味します。

これには、施設近隣での湿地再生や地下水涵養への投資が含まれます。エンジニアリングの側面では、水を蒸発させる代わりに循環させる「クローズドループ(閉鎖型)冷却システム」が、取水量を劇的に削減し、場合によってはほぼゼロにまで抑えています。

しかし、一社だけで流域全体を管理することは不可能です。次のフロンティアは、デジタル・イノベーションと共有型の水ガバナンスが融合する「流域レベルのコラボレーション」にあります。

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