世界の美食家が足繁く訪れる西麻布のフランス料理店「レフェルヴェソンス」。 ミシュランガイド東京では三つ星とグリーンスターを獲得し、料理・空間・サービスのクオリティの高さはもちろん、サステナブルな取り組みでも知られる名店だ。
店の美しい料理や哲学、そして洗練された内装は公式インスタグラムで発信され、5万人を超えるフォロワーをもつが、昨今フーディーの間で話題となっているのが「スタッフミール」つまりは「賄い」を紹介する同店の裏アカウントである。
ハンバーグにハヤシライス、名古屋風唐揚げに筑前煮、ロシアからの研修生がつくったボルシチなど、そこに投稿されるワンプレートの賄い料理はまさにシズル感たっぷり。厨房の活気やチームの飾らない日々が垣間見え、気持ちがほっこりとさせられる。ダイニングで供される料理とはまた違うスタッフの日常を彩る一皿は、ダイナミズムと温かみに溢れていて、見る者の食欲を掻き立てるのだ。
スタッフのエネルギー源であり「三つ星レストランの原動力」となっている賄い。これを掘り下げることで、成功しているレストランの哲学や活気ある企業を育てるためのヒントを得ることができるのではないか。そんな思いに駆られて「レフェルヴェソンス」の厨房へ潜入し、賄いづくりの現場を取材した。

三つ星レストランのある日の賄い
同店を訪れたのは2月某日。厨房は満席のランチ営業が終了すると、すぐにスタッフミールの準備に取り掛かる。賄いが供されるのはランチとディナー営業の合間のわずかな休憩時間となる16時~17時。担当スタッフは限られた時間内で調理を進め、16時には仕上げる必要がある。
「当店には15~20人のシェフがいますが、誰もが賄いを担当できるわけではありません。食材や予算の制限があるなか、まとまった人数分の美味しい料理をつくる。これは技術のみならずセンスや手際も必要で、賄いづくりはシェフとして成長するための登竜門にもなっていると思います」と広報担当の細川晴香さんは言う。
この日の賄い担当、工藤侑由(クドウ ユウユ)さんは入社4年目。小柄な体ながら若さと活力にあふれているキュイジニエールだ。さっそく彼女にメニューを尋ねたところ、「サバ南蛮と大根サラダです。最近は鶏肉を使った料理が多かったので、みんなに魚も食べてもらいたくて」とスタッフの健康を気遣う母親のような表情を覗かせた。
揚げたてのサバの横には大量の野菜とその端材(皮、芯、ヘタ、根など)が入った箱が置かれている。「当店では約60種類もの野菜を使用しますが、端の部分などお客様に提供しない箇所はサラダにしてみんなで食べます。さらに余った端材は、野菜出汁にして味噌汁などに使うんです」と話すのは、入社3年目の「野菜博士」こと上西さん。
「今は根菜が美味しい時期ですが、そろそろ山菜も出始めています。このサラダを通じて皆が季節の移ろいを細やかに感じることができますし、サービススタッフも提供野菜について学ぶことができるんです」と教えてくれた。



