時計の針が16時を指すやいなや「まかないできました!」という掛け声が響き、厨房前のカウンターテーブルにズラリ料理が並べられていく。サバ南蛮、タルタルソース、大根サラダ、メークインと里芋のポテトサラダ、そして定番の端材を使った生野菜サラダに、ごはんと味噌汁という充実したメニューだ。
取材をした金曜日は「フライデースイーツの日」ということで、パティスリーチーム特製のフランス伝統菓子「ファーブルトン」の甘美な香りまで厨房に漂う。
時間のとれるスタッフから待ってましたとばかりに列をつくる。営業中の緊張感から解き放たれ、学校給食のように賑やかに料理を盛り付けてゆくシーンは何だか微笑ましい。カウンターには料理名と共に使われている食材の品目数が「17品目」と明記されていて、栄養面への配慮も窺える。
「美味しくて健康的な賄いをきちんと作るということは仲間からの信頼を得ることでもあると思うんです。時間に間に合わせるとか、火入れや味付けをちゃんとするとか。料理人として必要なことをここで実践することが、信頼関係の構築や自身の成長に繋がると思っています」と工藤さんは語った。
店の信念を体現
レフェルヴェソンスの「賄い」は、調理スタッフが技術を磨く場であり、サービススタッフが食材を学ぶ場であると共に、店の哲学を体感し実践する場にもなっている。同店の生江史伸エグセクティブシェフは、レストランにおけるサステナビリティへの先駆け的な取り組みで知られるが、賄いづくりがその文化を確実にスタッフに定着させている。
先に紹介した端材のサラダや出汁に限らず、自家製キャビアを提供するために調達するチョウザメもその一例だ。「身の部分はなかなかお客様にはお出しできませんが、我々スタッフがその命を無駄にせずしっかりいただいています。淡泊な味なので照り焼きやフライにするととても美味しいですよ」と細川さんは笑顔を見せる。
最近はベジタリアンメニューやヴィーガン料理が賄いに登場する機会も増えてきた。
「日頃からお世話になっている農家さんのお野菜をよりたくさん使わせていただくことができるし、環境問題や健康に対しての意識も高まる。正直、ガッツリした肉料理のほうがみんな嬉しそうな顔をするのですが(笑)、プラントベースでも美味しくて満足度の高い料理を継続して提供できれば、理解も深まり反応も変わってくるはずです」と工藤さん。持続可能なガストロノミーを目指す店の信念が、賄いを通じてしっかり根付いている。


