欧州

2026.04.03 11:30

イラン攻撃と米制裁緩和で潤うロシアの戦費、ウクライナ停戦の見通しは瓦解

ロシアがウクライナで運用していたイラン製の攻撃ドローン「シャヘド-136」。撃墜された機体が2025年10月14日、英ロンドンの英議会下院で公開された(Leon Neal/Getty Images)

ロシアがウクライナで運用していたイラン製の攻撃ドローン「シャヘド-136」。撃墜された機体が2025年10月14日、英ロンドンの英議会下院で公開された(Leon Neal/Getty Images)

米国のイラン攻撃に伴う原油価格の急騰とロシア産石油に対する制裁緩和は、ロシアの軍事資金を一気に膨ませ、ウクライナに対するミサイル攻撃の拡大につながるだろう──。ロシアの戦時体制とプーチン政権に詳しい世界有数の専門家は、こう分析している。

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皮肉なことに、 ロシア産石油の世界市場向け供給をめぐる米国の方針転換は、クレムリン(ロシア政府)に思わぬ利益をもたらすだけでなく、中東全域の米軍基地を標的としたイランのドローン攻撃を後押ししてしまいかねないと、米防衛シンクタンクのアトランティック・カウンシル(大西洋評議会)が発行するオンライン雑誌『Ukraine Alert(ウクライナ・アラート)』のピーター・ディキンソン編集長は指摘する。ウラジーミル・プーチン大統領を最高司令官とするロシアは、イラン製の自爆型ドローンを高速化し、攻撃力を高めて軍事同盟国であるイランに送り返しているからだ。

ウクライナ・アラートは、旧ソ連の再興という大義名分を掲げてウクライナ征服を目指すプーチンの企てを追跡している。ディキンソンは筆者のインタビューに対し、プーチンはウクライナ侵攻に用いる武器を増強するために「可能な限り(イランでの)戦いを長引かせる必要がある」と語った。

アトランティック・カウンシルの研究員でもあるディキンソンは、中東の紛争や、ロシアの世界市場再参入に対する制裁の緩和という米国の矛盾した措置により、間接的に生み出される利益がロシアの疲弊した経済を活性化させ、民主的なウクライナを粉砕・併合するための作戦資金を潤すことになる、と述べている。

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米国がこれまでの政策を転換し、ロシア産石油製品を各国が購入することを認めると発表した数時間後、フランスとウクライナの両首脳はこの決定を激しく非難した。

仏紙ル・モンドによると、パリのエリゼ宮(大統領府)でエマニュエル・マクロン大統領と会談したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、会談後の共同記者会見で、ロシアを利するホワイトハウスの戦略を異例の強さで批判。米国の制裁緩和は「ロシアに約100億ドル(約1兆6000億円)もの戦争資金を提供しかねない。確実に平和のためにはならない」と訴えた。マクロンもこれに同調し、イラン情勢に端を発する原油価格の高騰がフランスや欧州連合による対ロシア制裁に影響を及ぼすことはないと強調した。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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