こうした中、プーチン政権の内情を批判的に描いた著書『All the Kremlin’s Men: Inside the Court of Vladimir Putin(クレムリンの男たち:ウラジーミル・プーチン政権の内幕)』を出版し、ロシア政府から「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定されているロシア人ジャーナリストのミハイル・ジガルは、米紙ニューヨーク・タイムズに興味深い論説を寄稿した。
それは、制裁の影響などでロシアの経済状況が悪化したことを受け、プーチン大統領が今年に入り、本格的な和平交渉を通じたウクライナでの戦争終結を真剣に検討していたというものだ。しかし、2月末にイスラエルと米国がイラン攻撃に踏み切ったため、クレムリンを取り巻く情勢は一変したという。
現在亡命中でアトランティック・カウンシルのフェローを務めるジガルは、中東における紛争が石油供給に与える影響と、米国によるロシアの石油輸出容認は、ウクライナ空爆を次の段階に押し上げるだろうと指摘。「奇妙な歴史の巡り合わせにより、イラン攻撃はウクライナでの戦争終結の見通しを瓦解させた──プーチンにそれを検討する用意があるように見えた、まさにその瞬間に」と記している。
そこで筆者は、ウクライナに詳しいディキンソン編集長に、ロシアが米・イスラエルによる対イラン軍事作戦の最大の受益者になるという皮肉が起こり得るかを尋ねた。米国とイスラエルは先鋭化するイランによる核兵器製造の脅威の排除を掲げているが、ロシアは中東全域の米軍機や軍艦、レーダー施設を正確に標的とするための兵器や情報をテヘランに提供し続けている。
「ロシア産石油に対する米国の制裁が一部解除されたことは、確かにクレムリンにとって有益だ」とディキンソンは述べた上で、次のように続けた。「だが、ロシアがイラン攻撃から恩恵を受けている最大の理由は、ホルムズ海峡の実質的な封鎖による原油価格の高騰と供給制限という、より広範な要因に基づいている」
「原油の供給が減り、価格が高騰しているため、ロシアは強気の立場から売買に応じ、最高値で売りつけることができる。ほんの1カ月余り前までは、こうはいかなかった。年が明けたばかりの頃は、極めて低価格での売却を余儀なくされ、買い手を見つけるのさえ苦労していた」
「つまり、イラン攻撃はロシアにとって経済的には朗報だ」とディキンソンはみている。


