3月初め、Databricksのアリ・ゴドシCEOは、エンジニアリング部門全体に向けて基調講演を行った。その中で彼は、あるエンジニアを名指しした。1月の2週間で、トークン(AIモデルがテキストを生成するためのデータ処理の最小単位)に7000ドル(約110万円)超を費やした人物だ。ゴドシの意図は、浪費を咎めることではなかった。むしろ、その逆である。
「エンジニアリングの全員に拍手をさせ、彼がやったことを称えた」とゴドシは語る。「全員にこれを使わせたいのだ」
ゴドシによれば、そのエンジニアは同社の社内コーディングツール「Isaac」を通じてトークンを使用した。IsaacはAnthropicやOpenAIのものを含む、複数のAIモデルを呼び出すという。
評価額1340億ドル(約21兆4000億円)のデータインフラ企業Databricksだけが、エンジニアにAI活用を促すことに熱を上げているわけではない。ここ数カ月、バイブコーディングが爆発的に広がり、AI生成コードの信頼性が高まるなかで、シリコンバレーはソフトウェア開発者に「全力投入」を迫ってきた。それをどう定量化するのか。エンジニアがトークンにどれだけの金を使っているか(請求は通常、雇用主が負担する)を測るのである。狙いは、AI予算を上限まで使い、生産性をブーストすることにある。
トークン価格はさまざまだ。廉価なモデルや基本的な作業なら、通常は100万トークンあたり数セント(数円)で済む。より複雑な計算やプレミアムモデルでは、100万トークンあたり20ドル(約3千円)から100ドル(約1万6千円)超まで跳ね上がることもある。例えばAnthropicのClaude Opus 4.6(同社の最新フラッグシップモデル)では、同社は100万「出力」トークン(ユーザーのプロンプトへの応答として生成されるテキスト)あたり25ドル(約4千円)を請求している。
全米で多くの企業が引き締めに入り、従業員を解雇している(Metaのような巨人ですらそうだ)一方で、AI大手やスタートアップの中には、従業員がトークンにどれほどの金を使っているかを誇示するところが少なくない。



