「仕事を失わずに働き続ける秘訣は、『職場になくてはならない存在』になること」──長年にわたり、そんな話を聞かされて来た人も多いだろう。頼りになる人、業務の最重要システムを把握している唯一の存在、何でも解決できるオフィスのヒーローになれ、といった話だ。
一見したところこれは、キャリアを飛躍させる賢い戦略のように思える。会社側が是が非でも失いたくない社員になれば、クビになる心配とは無縁、というわけだ。
だが、このようなぱっと見では良さそうなキャリアにおける目標が、今どきの職場では最高クラスの危険な罠になっている、と聞いたら、どう思うだろうか? よく考えてみてほしい。企業にとって不可欠な存在になろうとすると、実力はつかず、袋小路にはまり込んでしまうのがわかるはずだ。
以下では、「安全策」だと思っている戦略が、気づかないうちにキャリアを停滞させてしまうことのメカニズムや、本当の意味で揺るぎないキャリアを築くための方法について説明しよう。
罠その1:昇進の道が閉ざされる
今の仕事で、究極に最高の結果を出したとしよう。今や、複雑な社内ソフトウェアを使いこなし、気難しい顧客が信頼を寄せ、旧世代のプロジェクトの経緯を知っている唯一の人物になったとする。だが、上司から見ると、こうした人物は昇格候補ではなく、もはや重要なインフラの一部だ。
こうした人を昇進させると、大問題が発生する。それは、「この人の仕事を誰が受け継ぐのか?」という問題だ。そのため、上司はこの人を経験を積んでいるリーダー候補としてではなく、あらゆる犠牲を払って守らなければならない「単一障害点」(ここが止まるとシステム全体が停止してしまう重要なポイント)とみなすだろう。
こうした人は、職場に輝くスターではなく、業務を支える柱になってしまっている。柱は上昇しない。あらゆるものを支える役割を担っているからだ。
罠その2:燃え尽きのリスクを抱える
職場にとって不可欠な知識を持つ人が一人しかいないと、その人は、本当の意味でのオフタイムを持てなくなる。勤務時間外にトラブルが起きるたびに真っ先に呼ばれるようになり、休暇を楽しんでいるあいだも「ちょっとした質問」に答えられる唯一の人物として呼び出される。このように、常に職場の責任を負わされていると、そのうち向上心が減退し、燃え尽きに陥ってしまうはずだ。
Gallup(ギャラップ)の報告書「世界の職場の現状(State of the Global Workplace)」によれば、従業員のストレス度は現在、史上最高に達し、全世界では従業員の40%が、前日に「多くのストレス」を体験したと報告している。
「問題を解決できる唯一の存在」として自分を位置づけるのは、常に神経が張り詰めた態勢でいる状況を、自ら選んでいるということだ。こうした状態は、持続可能ではない。その上、真の成長へとつながる、戦略的で未来を見据えた仕事に集中する気力を、完全に奪ってしまう。



