罠その3:せっかく得たスキルが、今の会社以外では通用しない
確かに、勤務先の会社特有のプロセスや社内政治に関する、長年をかけて蓄積してきた深い知識は、今勤めている会社という囲いの中では、万能の力のように感じられるだろう。しかし、いったん「囲いの外」に出たなら、このスキルはたちまち価値を失う。一つの会社のやり方に過剰に適応すると、広範で売り物になるはずのスキルが萎縮してしまうリスクが生じる。
個々の従業員の目標は、今の雇い主である企業にとって価値のある存在になることだけではないはずだ。目指すべきは、広く労働市場にとって価値ある存在になることでなければならない。
仮に明日、今の会社でレイオフが実施されたとして、他の企業は、これまで築いてきた社内ソフトウェアに関する深い知識を理由に、賃金を上乗せしてくれるだろうか? おそらくそれはないだろう。真の意味で揺るぎないキャリアは、特定の会社に「サイロ化」されたスキルではなく、どこでも通用するスキルから生まれるものだ。
目指すのは、「なくてはならない存在」ではなく「価値ある存在」
「職場に不可欠な人材」という罠に陥ることを防ぐには、知識を一人でためこむのではなく、共有するように、マインドセットを転換することが大切だ。目標は、今の仕事に精通し、誰かにやり方を教え、代わりにやってもらえるようになることだ。そのために、以下の3つのタスクを実行してみてほしい。
・すべてを文書化する:最も複雑なタスクについてのマニュアルを作成しよう。テンプレートや手順を記したドキュメントの共有フォルダを構築しよう。属人的になっていた知識に他の人もアクセスできるようにすれば、管理職のように思考し、規模拡大可能なシステムを構築できる能力のアピールにつながる。
・積極的に後任を育成する:職場の後輩のうち一人を選び、育ててみよう。まずは自分の仕事のうち比較的小さく、ルーティン的なタスクを任せるといい。そうすれば、自分はより価値の高い仕事に割く時間ができるし、上司に対しても異動の準備ができている、と明確にアピールができる。すでに後任を育成しているからだ。
・どこでも通用するスキルにフォーカスする:今の職務をマスターするだけでなく、その基盤にある、どこでも価値を発揮できるスキルの熟達に集中しよう。具体的には、プロジェクト管理、データ分析、顧客との意思疎通、チームリーダーとしての統率力といったものだ。それらは、本当の意味で揺るぎないスキルポートフォリオの基礎となるはずだ。
真の意味で実力のあるキャリアとは、「自分にしかできない仕事がある」ことではなく、「どんな仕事でも引き受けることができる」能力から生まれるものだ。「職場に不可欠な存在」になろうとするのはやめよう。まずは適応力を持ち、戦略的に動ける人間になることに焦点を当てよう。今の役職をはるかに上回る可能性を会社側が見いだしてくれるよう、自らの価値を高めるのだ。あなたならきっとできる。


