ハイエナの社会的支援は、体格に勝る
2018年に学術誌『Nature Ecology & Evolution』に発表された研究は、ブチハイエナの群れにおけるメスの優位性について、それまで信じられてきた多くの仮説を覆した。この研究では、野生ハイエナ748頭の個体間で起きた、4133件の攻撃的なやりとりを分析した。分析の結果、争いの勝敗は、性別や体の大きさにかかわらず、各個体が持つ社会的支援の量によって予測できることが確認された。
簡単に言うと、群れ内で生じた争いの勝者を予測する最も強力な要因は、単なる体力や攻撃性ではなく、社会的支援、すなわち、個体が対立の際に助けを求め、頼ることのできる協力関係や血縁関係のネットワークであることが証明されたわけだ。そして、メスの方がはるかに強固な「味方のネットワーク」を持っているため、一対一の対決においては、オスに対してほぼ常に勝利を収めていた。
では、なぜメスがこの点で有利なのだろうか。その答えは、個体群の動態パターンにある。メスのハイエナは、ほぼ例外なく生まれた群れに終生留まり、安定した社会的絆を維持する血縁のネットワークの中で生活する。一方、オスは通常、性的に成熟すると分散し、生まれた群れを離れて別の群れに加わる。
新しい群れに入ったオスには血縁がおらず、社会的つながりもほとんどない。すなわち、たとえ、元から群れにいるメスと身体的に互角であっても、オスは序列の最下層からスタートすることになる。これは、彼らの群れ社会が極めて縁故主義的であるためだ。社会的支援は、主に血縁の個体に与えられるため、生まれた群れに残ることの少ないオスは自動的に、残るメスに比べてつながりが希薄になるのだ。
総じてこの研究は、生得的な力の強さではなく、社会的絆の不均衡こそが、最終的にメスに優位性をもたらすことを裏付けている。
メスのハイエナは、本当に「超攻撃的」なのか
これらの研究は、メスのハイエナが手強い存在である要因を裏付けるだけでなく、メスが一貫して成功を収める理由についても新たな見方を提供している。以前の理論は、メスの優位性を、テストステロンやアンドロゲンといった雄性ホルモンへの曝露(が攻撃性を促進している可能性)に関連付ける傾向があった。それに対して、社会的支援の理論は、ハイエナ社会で権力を握る上で、単純に「誰がより大きいか」ではなく、「誰を味方につけているか」が重要であることを示唆している。
とはいえ、攻撃性と社会的行動は、依然として密接に絡み合っている。2022年に学術誌『Frontiers in Ecology and Evolution』に発表された分析など、その後の研究によると、優位性を争う相互作用には、生まれ持った行動の傾向も関与している。例えば、攻撃を仕掛ける傾向はメスの方が強いことや、オスはメスに比べて服従的であることなどだ。
ただし、このような研究でさえ、ハイエナの群れの権力構造は、社会的支援と個体の行動特性の両方が組み合わさって形成されていることを強調している。「生まれか育ちか」という単純な問題ではなく、最終的には、その両方が作用しているのだ。


