サイエンス

2026.04.15 18:00

社会性肉食動物の中で、なぜハイエナは「メスが群れを支配」するのか

ブチハイエナ(stock.adobe.com)

ブチハイエナ(stock.adobe.com)

多くの社会性肉食動物は、オス優位の社会を築いている。しかし、東アフリカや南部アフリカの広大な生態系に生きるブチハイエナ(学名:Crocuta crocuta)は、哺乳類のこうした常識を覆している。メスが序列の頂点に立ち、日常的に、どのオスよりも高い順位についているのだ。

メス優位の社会構造という概念自体は、決して珍しいものではない。ゾウやシャチ、一部の霊長類なども、メスを中心とした集団をつくるが、ブチハイエナのそれは、いくつかの理由から真に例外的だ。深遠な進化の力が、幾世代もかけて彼らの社会動態を形作ってきたが、進化生物学者がその仕組みを完全に理解し始めたのは、ごく最近になってからだ。

生物学研究の成果に基づき、ブチハイエナのつくる母系集団について、これまでに判明していることを紹介していこう。

ハイエナの母系集団は、成り行きではなく意図的な選択

ハイエナの社会については、数十年前に始まった初期の行動学的研究において、その基本的な輪郭が報告されている。それ以後、数十頭からなる群れ(クラン)の中で、闘争や食料へのアクセス、繁殖の機会において、メスのブチハイエナが一貫してオスより優位に立っていることは、今や定説となっている。

1986年に学術誌『Animal Behaviour』に発表された著名な研究では、60~80頭からなるブチハイエナの群れの社会構造を4年間にわたって調査した。その結果、ブチハイエナにおける母系的な順位制は、厳格に継承されることが明らかになった。

つまり、生まれた子は母親の順位を受け継ぎ、上位のメス(およびその子孫)は、食料やその他のリソースへの優先的なアクセスを享受する。メスの成獣より優位に立つことができたオスは、群れを支配するメスの子孫であるオスだけだった。これは、社会的な序列がいかに厳格であるかを物語っている。

何十年ものあいだ、生物学者はメスの優位性について、単純に力の強さ、あるいは攻撃性によるものだと考えていた。この仮説は、直感的に非常に受け入れやすかった。ブチハイエナのメスは、平均してオスよりもはるかに体が大きいからだ。さらにメスは、しばしば「擬陰茎」や「擬陰囊」と呼ばれるものを含む、極度に男性化した外性器を持つ。これらの特徴は、身体的に強靭で、さらには過剰に攻撃的なメスという印象につながりやすい。

しかし、最近の研究により、メスの優位性に関する知見は大幅に拡大している。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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