これは、百度のApollo Go自動運転タクシーの導入を検討するあらゆる国にとって、明白な国家安全保障上のリスクとなる。
同時に、欧米の車両群にとっても核心的な問いを突きつけている。テスラは集中制御システムを通じて車両を遠隔で無効化する機能を有しているが、車両の走行自体が集中制御への常時接続に依存しているわけではなく、テスラ車が地域・国家・国際レベルで一斉に停止した事例はこれまで確認されていない。グーグルのWaymoのような完全自動運転の車両群にとっても、これは重大な問いである。車両は本部との常時接続を必要とするのか、それとも必要としないのか。
Waymoは昨年末、サンフランシスコで大規模停電が起きた際に車両群の運行を停止させた。ただし同社によれば、車両が遠隔操縦されることは一切なく、通信が途絶した場合でも走行を継続できる可能性が高いとみられる。
筆者はWaymoの広報担当者に対し、中央システムの障害が車両群全体の停止を引き起こしうるかどうかを含め、詳細を問い合わせている。
少なくとも今回の出来事は、規制当局に対する重要な警告となる。自動運転車やロボタクシーの車両群を大規模に公道で走らせる前に、そのソフトウェアと制御スタック(制御に関わるシステム階層全体)を十分に把握しておく必要があるということだ。集中型の指揮・制御システムに深刻な技術的問題が生じれば、物的損害はもちろん、人命にかかわる事態すら起こりうることが明らかになった。しかもこれは、日常的に起こりうる通常のシステム障害にすぎない。
さらに恐ろしいのは、悪意あるハッカーがこうしたシステムを攻撃し、金銭目的やテロのために車両を動員するシナリオだろう。たとえばイランは、欧米諸国や企業へのハッキングを強化しているとされ、最近のカシュ・パテルFBI長官の電子メールへのハッキングもその一例である。ロボタクシーの車両群ほど格好の標的に、イランが関心を示さないはずはない。
テロリズムと非対称戦争(軍事力で劣る側が奇襲やサイバー攻撃など非正規の手段で戦う戦争形態)は、ますます高度化している。制御を奪われたロボタクシーの車両群は、深刻な被害と破壊をもたらしかねない。
これは、自動運転車メーカーと各国政府に対する警鐘である。


