起業家

2026.03.31 16:07

従業員ゼロで年商2億円超──庭遊びゲームを副業で育て、売却した2人の物語

stock.adobe.com

stock.adobe.com

広告代理店の創業者アマンダ・グエンは、友人たちとメキシコを旅行中、バレーボールがしたくなった。しかし問題が1つあった。ネットがなかったのだ。

advertisement

そこで一行はその場しのぎで工夫し、敷地内にあった橋を仕切り代わりに使うことにした。「ネット越しにボールを打つのではなく、橋に向かってボールを打ち、跳ね返らせて遊んだんです」とグエンは語る。「最高に楽しかった」

当時のグエンは気づいていなかったが、この体験がやがてBoardballというゲームの誕生につながる。2021年9月、共同創業者のデビッド・ボリッシュとともにローンチしたこのゲームは、バレーボールとラウンドネットを掛け合わせたもので、ネットの代わりにポータブルボードを使用する。

2人は従業員ゼロで年商150万ドル(約2億2500万円)にまでスタートアップを成長させ、このほどカナダ・オンタリオ州に拠点を置くVivere Ltd.に売却した。同社は数十種類の裏庭用ゲームのポートフォリオを持つ。

advertisement

「アマンダとデビッドは屋外ゲーム市場で独自の存在を築き、優れたアイデアをBoardballへと昇華させ、成功し成長するビジネスに変えました」と、Vivere Ltd.のジェイソン・ストーター社長は声明で述べた。

グエンとウィーラーは、年商100万ドル(約1億5000万円)を突破するソロプレナーやビジネスパートナーの急成長するコミュニティの一員である。米国国勢調査局のデータによると、100万ドルに達した従業員なし事業者の数は2023年に11万7060件となり、2022年の11万6803件から増加した。2022年の総数は2021年の5万7822件から倍以上に増えている。

従業員なし事業者とは、給与支払い対象の従業員を持たない事業体のことだ。多くはソロプレナー、パートナーシップ、あるいは小規模な創業チームが運営し、オートメーションや外部委託、人工知能を活用することでオーナーの能力を拡張している。2022年11月のChatGPTの登場と、その後に続いた使いやすいAIツールの普及は、多くの中小企業オーナーがAIを活用する転機となった。

「泥臭いルーツ」

31歳のグエンは、ずっと起業家になりたいと思っていた。マクマスター大学で商学士号を取得し、マーケティングと財務を専攻した。母親はカンボジアから、父親は1980年にベトナムから移住した移民の子として、彼女は自分には「泥臭いルーツ」があると冗談めかして言う。両親からは安定した仕事に就くよう勧められたが、「泥臭いルーツがあると、ビジネスをつくることになる」と彼女は語る。

グエンは2018年、パートナーとともにデジタルマーケティング代理店Search + Gatherを立ち上げた。同社はB2B SaaS、暗号資産、ハードウェアなど多様な分野で数百のブランドのローンチやスケールアップを支援してきた。「そこからエネルギーや高揚感を得ているのだと思います」と彼女は言う。

メキシコからトロントへ戻った後、同じ起業家精神が再び火を噴いた。友人たちと遊んだゲームを再現しようと、室内スカッシュコートの床で壁にボールを跳ね返らせる実験を行った。しかしパンデミックで即席の実験場は閉鎖に追い込まれ、別のアプローチを試みることになった。ネットの代わりにポータブルボードを使う方法だ。テーブルの脚を切り落としたりジム器具を使ったりして自作を試みたが、一貫した体験を実現するのは難しかった。レンダリングを作成した後、父親と叔父の助けを借りて木製ボードでプロトタイプを開発し、まもなく製造準備が整った。「ゼロから何かを作り上げることに、私はいつもワクワクしていました。Boardballはまさにそれだったんです」と彼女は語る。

バイラル化

グエンと仲間たちが屋外で初めてBoardballをプレーした日、彼らはソーシャルメディアに動画を投稿し、それがバイラルになった。「『Boardballって何?どうやったら手に入るの?』と聞いてくる人が続出しました」と彼女は言う。「ソーシャルメディアにコメントが殺到し始めた瞬間、『やばい、何とかしなきゃ』と思いました」

その夜、彼女とウィーラーは法人化した。従業員がいない中で、創業者たちは少ないリソースでより多くを成し遂げる方法を見いだした。自己資金での成長にこだわり、サンディエゴを拠点とする2人の顧客、デビッド・ウィーラーとリチャード・ベイリーをビジネスパートナーとして迎え入れた。

その過程で、AIなどのツールを使って会社を効率的かつ低コストで運営する方法も見つけた。「ワークフローやオペレーションの部分で、作業スピードを大幅に上げることができます。例えば配送の最安料金を見つけたり、特定の貨物コンテナを予約したりする際などです」と彼女は言う。

ゲームの成功は歓迎すべきものだったが、グエンを岐路に立たせた。動画がバイラルになったとき、彼女はMBA取得か住宅購入を検討していた。しかし今や、ゲームを製造するための高価な金型が必要だった。彼女は金型を選んだ。「製品をつくることは、私にとって大きな学びの経験になりました」と彼女は語る。

彼らはAmazonとShopifyストアでゲームの販売を開始し、消費者直販モデルを採用するとともに、学校への販売も行った。同社のウェブサイトでの小売価格は199.99ドル(約3万円)である。

認知度を高めるため、彼らは草の根マーケティングに頼った。ミートアップを企画し、公園でプレーする、といった取り組みだ。

アンバサダーマーケティングも効果を発揮した。ブランドを支持した著名アスリートの1人が、ビーチバレー選手で2024年オリンピック銀メダリストのメリッサ・フマナ=パレデスだ。「彼女は実際にゲームをプレーして、私たちに助言をくれました」とグエンは言う。また、YouTubeインフルエンサーのChadWithaJとも協力した。「彼はスポーツが大好きで、ライフスタイルコンテンツのセンスも抜群です」とグエンは語る。

ドラゴンを手なずける

彼らは2024年10月、カナダ版『Shark Tank』である『Dragon's Den』にも出演した。ピッチには、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でマーベルのスーパーヒーローを演じたシム・リウも登場した。「彼は私たちのピッチの一部でした」とグエンは言う。「彼とは握手で合意しました」。2つのオファーを受け、最終的にリウからの提案を選び、10万ドル(約1500万円)を獲得した。

ゲームが軌道に乗ると、グエンは再び転換点を迎えた。このゲームは、スポーツへの関心と専門的なスキルセットを組み合わせた、彼女にとって完璧な副業だった。今や成長の可能性を秘めていた。

しかし、広告代理店も好調だった。今年で創業10周年を迎え、20人のチームを擁している。彼女はBoardballを立ち上げる際、数百のブランドと仕事をしてきた経験を活かした。最終的に、彼女は代理店に集中し続けることを決めた。

「これはずっと私の副業でした」とグエンは言う。「広告代理店を経営していて、それを手放すことができなかったし、手放したくもなかった。だから9時から5時ではなく、5時から9時の仕事としてやってきたんです」

流通の拡大

そこに登場したのが、Vivereのセールスマネージャー、ゲイリー・ペッパーだ。彼はDragon's Denで同社を見て、12月に連絡を取ってきた。「私は常に、新進気鋭のゲーム会社や屋外ゲーム会社、そして屋外分野の製品にアンテナを張っています」とペッパーは言う。2〜3カ月ごとに買収や流通契約を行うVivereは、元のブランド名を維持している。

グエンと共同創業者たちは、Vivereがより広い小売流通をもたらし、ゲームの世界展開を支援できる点を気に入った。「これは双方にとって戦略的な動きでした。小売という観点で彼らが開いてくれる扉に、本当に胸が躍りました」と彼女は言う。ペッパーによると、カナダのコストコはすでに来年のブランド取り扱いを決定している。

VivereはBoardballを、フォースクエアとバレーボールを掛け合わせたCROSSNETなど、最近の買収案件に加わる好ましい存在と見ている。「VivereはBoardballの買収を喜ばしく思っています。当社のゲームポートフォリオが拡大し、最近買収したCROSSNETを補完する強力なバレーボール系製品が加わることになります」とストーターは述べた。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事