「資金の出し手」のエコシステム形成
──2026年、スタートアップシーンや投資環境はどう変化するか。
長島:26年で完結する話ではないが、「資金の出し手」のエコシステムが形成される一年になるだろう。VCだけでなく、(1)融資に積極的な金融機関、(2)既存株主から株式を取得するセカンダリーファンド、(3)持分法適用にとどまらず経営に踏み込んで関わろうとする事業会社ーー。こうしたステークホルダーが増加し、スタートアップがJカーブを描きながら成長するなかで、VCからセカンダリーファンドへ、そこから事業会社へと株主がバトンタッチする事例も増えていくだろう。
こうした動きにより、スタートアップはIPOを急ぐ必要がなくなり、事業を十分に成長させて上場する、あるいはM&Aを選択する判断がしやすくなる。さらに大きな事業がつくれる資金環境が整備されたため、グローバルと伍していくスタートアップが生まれる可能性が高まった。2月にはタクシー配車アプリ大手のGOが東証への上場を申請。同社のような大型IPOが実現すれば業界全体が活気づき、注目度の高いM&Aが続けば、スタートアップへの資金流入はさらに加速するだろう。
──2026年に特に注目している領域は。
長島:AIに関しては、日本のスタートアップは大規模言語モデル(LLM)そのものの開発よりも、その上で動くアプリケーションの開発が主戦場になっている。ただ、LLMであれアプリケーションであれ、裏側で使っている技術は各国共通で、言語の壁がほとんどない。構造的に最初からグローバルを見据えやすい領域だからこそ、26年はより大きな事業を作れるか、海外への足がかりを築けるかが問われる1年になるだろう。
「AI×ドメイン」で見ると、製造業は現場オペレーションの精度や業務知見の蓄積といった日本の強みを生かしやすい領域として期待が大きい。HR領域も、データは蓄積されている一方で十分に活用しきれていない場面が多く、生成AIの適用余地が大きい分野として注目している。
投資先では、生成AIを活用した法人向け業務用プラットフォームのJAPAN AIと、生成AIを活用した採用支援SaaSのフォワードの2社がまさにAI時代の波に乗り急成長している。
また、話題となった「SaaS is Dead」という見方についても一言触れると、SaaS企業が従来取り組んできたことは、ソフトウェアで顧客のDXに貢献することだ。AIの波が来たなら、AIとSaaSを組み合わせればいい。従来のSaaS企業こそ、顧客基盤もデータもある分、「波」を最も早く捉えられる。


