許容可能な損失とクラウドファンディング。挑戦を止めるな
コロナ禍という逆風は続きましたが、私たちは挑戦の手を止めませんでした。次にターゲットにしたのは、当時急速に拡大していたアウトドアトレンドです。焚き火の煙の香りと、白百合の持つ野性味ある香りは相性がいい。そこで、キャンプファイヤーというクラウドファディングサイトを活用し、キャンプ専用のオリジナルボトルの開発をぶち上げました。
クラウドファンディングの素晴らしさは、自社の資金を大きく投じる前に、顧客から予約という形で資金を募れることにあります。これもまた「許容可能な損失」の原則です。金銭的なリスクをほぼゼロに抑えながら、新しい市場の扉を叩く。結果、全国の泡盛好きやキャンパーから支持が集まり、白百合は「自然の中で味わう最高の泡盛」という新たな可能性も確立しました。
レモネード。失敗作にチョコレートという魔法をかける
池原酒造の物語の中でも、最も劇的で、かつエフェクチュエーションの「レモネードの原則(偶然や失敗を価値に変える)」を体現しているのが、チョコレート泡盛の誕生です。
蔵には、先代が造ったいわくつきの泡盛が眠っていました。それは、製造工程で意図せぬ事態が起き、油っぽくて米の糠のような独特の風味がついてしまった、いわば失敗作でした。そのまま飲んでも決して美味しくない。しかし、捨てるに捨てられない。池原さんからその相談を受けたとき、私の脳裏に浮かんだのは「ワインのペアリング」の論理でした。
赤ワインにお刺身を合わせれば生臭くなり、ステーキに白ワインを合わせれば味がしなくなる。ならば、この油っぽくて個性が強すぎる酒は、それ以上に濃厚で強いものに合わせれば、化学反応が起きるのではないか。
最初はラフテーやステーキで試しましたが、それでも酒の個性が勝ってしまいました。他に何かないか。そこで辿り着いたのが、チョコレートでした。
結果は、魔法のようでした。そのままでは不快にすら感じた油っぽさが、チョコレートの油脂分と溶け合った瞬間、芳醇なカカオの香りを引き立てる最高のパートナーへと変貌したのです。
そのまま飲むと美味しくないけれど、チョコと合わせるとめちゃくちゃ美味しい。
この潔いコンセプトで発売された商品は、当初のバレンタインギフトという枠を超えて大きな注目を集めました。先日、テレビ番組「アナザースカイ」で池原酒造が放映された際も、このエピソードは象徴的に取り上げられました。番組内で「そのまま飲むと美味しくないが、チョコレートと合わせると最高」と紹介される姿は、まさに欠点を魅力へと転換した瞬間の象徴でした。


