中央から離れた「辺境」こそ、イノベーションが生まれる場所だ。独自の高付加価値戦略を武器に「世界で勝つ」スモール企業。その強靭な成長モデルに迫る。
「エッジ(edge)」という言葉を耳にしたとき、何を思い浮かべるだろうか。個性的でとがっている人や物事を「エッジが利いている」と評するのは、お馴染みの表現だ。ある人は「cuttingedge(最先端)」という言葉を想像するかもしれない。ITへの関心が高い人なら、データが中央集権的に集まるクラウドに対するユーザー側、すなわち「現場」で即座にデータ処理や推論を行う、エッジ・コンピューティングやエッジAIを想起するかもしれない。この「エッジ」がもつイメージを日本企業に当てはめるなら、それは間違いなく「スモール企業」だろう。辺境にありながら最先端。規模が小さいゆえに現場感覚をもち、時代の変化に機敏に反応して大胆に動く。そういう企業たちだ。
Forbes JAPANが主催するスモール・ジャイアンツアワードは、9回目を迎えた。そこに集結した企業たちは、まさにこの「エッジ」の体現者である。たしかに、資本力やマンパワー、研究開発費においては、大企業に劣っているかもしれない。地理的にも、大都会のオフィス街ではなく、地方の静かな町など、一見すると世界の中心からは遠く離れた場所にあることが多い。「theedgeoftheworld」は「世界の果て(辺境)」を意味する。
しかし、その辺境という立ち位置こそが、機敏さと大胆さを与えている。大企業のような多段階の意思決定プロセスに縛られることなく、現場の感覚をダイレクトに経営判断へ反映させる。ちなみに「ontheedge」には「、崖っぷち」という意味がある。激動の時代を好機と捉え、崖っぷちからでもはい上がり、日本経済を塗り替えていく。そんな強靭なスモール企業を応援したい。
早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄は、今回のスモール・ジャイアンツアワードにおいていくつかの企業の共通点を「文化を売る会社」と評した。彼らは単に機能的な製品を売っているのではない。その背景にある日本のアイデンティティや、独自のライフスタイルそのものを輸出しているのだ。
例えば、東京都国立市のFSXは、日本のおもてなしの象徴であるおしぼりという独自の文化にアロマの香りを調和させ、より洗練されたおもてなしとして海外へ届けている。サツマイモを専門に生産・販売する宮崎県串間市の農業法人くしまアオイファームは、欧米のスイートポテトの概念を日本の焼き芋というスタイルで上書きしようとしている。これは単なる農産物の輸出ではなく、食文化のグローバル・リブランディングにほかならない。京都市のナベルは、生卵を食べる日本独自の文化に裏打ちされた高度な卵の選別包装装置で、世界市場を席巻している。
また、「感性の製造業」と呼ぶべき企業も、「エッジ」の最前線に立っている。和歌山市のテキスタイルメーカーA-GIRL'Sが生み出すニットは、その極限までの薄さと滑らかさで、世界のラグジュアリーブランドのデザイナーたちをとりこにしている。そこにあるのは、数値化できない人間の肌触りを追求する圧倒的な感性だ。石川県加賀市の石川樹脂工業が展開するブランド「ARAS」は、伝統工芸の職人技と最新の樹脂成形技術、そしてロボットによる自動化を融合させた。一つひとつの器が個性を有しながら、高い機能性を併せもつ。現代のライフスタイルに最適化された新しい工芸ブランドのあり方を提示している。



