『Forbes JAPAN』2026年4月号に掲載され、Forbes JAPAN Webで行う新連載、カルチャーイン・カルチャーアウトから企業を読み解く企画。
これからのヒット商品・サービス、そして経営はどのようにつくられるのか。「企業カルチャー」起点をいかに磨き、届けるのか、が鍵を握る。
これからのヒットするモノ、コト、サービス、さらには企業経営には、企業のカルチャーを起点とした「カルチャーイン、カルチャーアウト」のプロセスが必要である。経営コンサルタントの大森充、クリエイティブ・ディレクター兼編集者の花井優太のふたりが提唱する仮説だ。市場との固定密着が必要ななか、市場や消費者の声を起点とするマーケットイン、つくり手目線のプロダクトアウトとも異なる、新たなアプローチが重要になるという。この仮説について、象徴的な企業へ取材を行う連載をForbes JAPAN Web上で行う。第1回の特別編として、最も先進的な企業である、コクヨの代表執行役社長・黒田英邦へのインタビューを掲載する。
コクヨは2025年に創業120年を迎えた、文具からオフィス家具、空間、通販までの事業領域をもち、グローバルに展開している企業だ。21年策定の長期ビジョン「CCC2030」では、事業領域を拡張し、3000億円規模だった売上高を30年までに5000億円企業になることを目指している。120周年を機に行ったリブランディングでは、コーポレートメッセージとして「好奇心を人生に」を設定。象徴として、好奇心で人と人とがつながる場づくりを目指す新プロジェクトCURIOCITY構想を始動。そして、Campusをノートブランドから学生のまなびを支える「まなびかたブランド」へ刷新。さらに、「好奇心」をテーマにした短編映画3作品を製作。岩井俊二監督らが製作するなど、新たな取り組みを実施した。歴史ある企業のコクヨはなぜ、ヒットを生み出し成長を続けているのか。起点となるカルチャーから紐解いていく。
大森充(以下、大森):「カルチャーイン、カルチャーアウト」という仮説は、企業経営に関するアドバイスをするなかで、現在のマーケティングやブランディングに対する問題意識から始まっています。現代は市場の変化が早いことに加え、購入目的も費用対効果を求めるのではなく、「推し活」に象徴されるように応援購入や共感購入へと変わっています。モノやコト、サービスが売れる理由もこれまでと今では明らかに変わってきています。従来、言われていたプロダクトアウト、マーケットインは理論として理解できても実践しにくく、実践したとしてもAIなどの技術台頭もあり、類似商品・サービスが横行しがちです。
現代においては「誰がどのような価値観や思いをもってつくっているか」が重要だと思っています。いくらモノやサービスが良くても、つくり手の価値観や思いがわからなければ応援・共感されません。価値観や思いをカルチャーとして根付かせている企業は競争力があり、ヒット商品を生み続けられていると思っています。これからは、企業のカルチャーとともに市場に向かうことが、より市場の共感を生み、売れることにつながるのではないか(「カルチャーアウト」)。また、界隈や世界線、社会記号という市場で生まれ始めているカルチャーをキャッチして企業カルチャーに吸収・反映していくことも、モノ・コトづくりには必要なのではないか(「カルチャーイン」)。この企業のカルチャーを起点に、イン、アウトをエコシステムのように回しながら、モノ・コトづくり、そして経営まで行うことが重要になるのではないか、というのが私たちの仮説です。
KEYWORD 1
120周年リブランディングコクヨは2025年の創業120周年を機にリブランディングを行った。コクヨ初のコーポレートメッセージとして「好奇心を人生に」を設定し、ロゴを含むコーポレートアイデンティティも刷新。好奇心で人と人とがつながる場づくりを目指す新プロジェクトCURIOCITY構想を始動。後述する短編映画「The Curiosity Films」も3作品製作。今後は提供価値をグローバルで貢献していくことを視野に入れる。



