経営・戦略

2026.04.16 14:30

コクヨ120年成長を牽引する「カルチャーイン、アウト」の新常識

(写真左から)黒田英邦(コクヨ代表執行役社長)・大森充(日本総合研究所)・花井優太(クリエイティブ・ディレクター/編集者)

黒田:そうですね。「世界一風通しのいい会社になる」ということは言っていますが、「世の中のこれをこう解決するのだ」というような箸の上げ下げまで言うのは嫌なんですよね。輪郭だけ渡して、その範囲内でみんなでやろうという雰囲気をつくる。事業領域が広く、事業部もたくさんあるし、自分たちがお客さんに対して、どれだけアイデアを出せるかが生命線になるわけです。だから、企業理念もパーパスも、人によって受け取り方が違っていい。違うからにはそれをみんなで話そうと。1年間かんでも味がなくならないガムみたいなものがつくれないかと思っていました。

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大森:このカルチャーがあるから「なんで製造業なのにうちがこれやらないといけないのか」みたいな、せっかくつくったのに経営陣が否定したり、誰も言っていないのに経営陣が勝手につくったりというのがあまり起きない会社ですよね。また、社員のB面を引き出してつなげる、カルチャースナックという取り組みなんかも面白いですよね。

ピボットの「軸足」を大事にしてきた

花井:コクヨのカルチャーアウト、カルチャーインについても話を伺いたいです。ブランドが何を約束するのかが問われるなかで、コクヨは「好奇心」を打ち出して、ワクワクする過程を応援するというメッセージを出しています。文具、オフィス家具、空間などの事業領域をもつにもかかわらず、コングロマリット企業に見えない「雑誌的」な企業の側面も持つ、カルチャーアウトをしている企業だと思っています。

大森:カルチャーを基盤にモノづくりをすることが、結果的にお客さんがストーリーを購入していることにつながっていると思うんです。コーポレートメッセージを伝えるために映画などをつくった意義なども含めて教えてください。

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黒田:「好奇心を人生に」と社会に言うことで、社員がもう一度「そこをベースに企業活動し、アイデアを出すんだ」という北極星を打ち出しました。さらに、世の中から見ても評価されるメッセージをつくったと思うので、外の人たちにも反応してもらいたい。それが社員のモチベーションにも跳ね返ってきますから。だから、僕らの思う未来への反応が見たいと映画までつくったのです。今、3作品でYouTube総再生回数1500万回を超える反響をいただいておりますが、社会に約束することで、自分たちがよりブレないカルチャーにつながり、チャレンジをあきらめずに続けることにつながる。グローバルからの反響も大きかったですしね。

花井:宣伝要素を入れ込まずに愛されるための映画制作のような取り組みができるのは、まず人々にワクワクして欲しいという気持ちが企業として強いからだと思っています。

黒田:商品や職種にとらわれないで、お客さんや社会にいいことをする、役に立つことをすると思うと、そういう取り組みが許される前提がないといけない。

大森:一方で、上場企業でもあり、ROE(自己資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)をどちらも上げていかないといけないなかで、こういうお金の使い方ができるのは器がでかい。不思議なのが、120年の歴史ある企業で、スタートアップ的な意思決定ができるということ。日本企業にとってもいい学びになるのではないでしょうか。

また、直近でも、「大人のやる気ペン」やオフィスチェア「ingCloud」といったイノベーティブな商品が生まれてきたりしたと思います。それが出島的な新規事業開発部署ではなく、全社的に行えているのがすごいと思います。

花井優太◎クリエイティブ・ディレクター/編集者。情報戦略、コピーライティング、商品コンセプト開発、PR、TVCMやミュージックビデオの映像企画などを行う。雑誌『tattva』編集長。著書に『カルチュラル・コンピテンシー』(共著)がある。J-WAVE「TINYTHEORIES-あくまで仮説だけど-」ナビゲーター。
花井優太◎クリエイティブ・ディレクター/編集者。情報戦略、コピーライティング、商品コンセプト開発、PR、TVCMやミュージックビデオの映像企画などを行う。雑誌『tattva』編集長。著書に『カルチュラル・コンピテンシー』(共著)がある。J-WAVE「TINYTHEORIES-あくまで仮説だけど-」ナビゲーター。

KEYWORD 5
映画製作コクヨでは創業120年を機に行ったリブランディングの一環として「好奇心」をテーマにした短編映画「The Curiosity Films」として3作品を製作。世界で活躍する日中米の監督に依頼、岩井俊二監督は「世界地図」、デレク・ツァン監督は「As Written(アズ・リトゥン)」、シュチ・タラティ監督は「Hidden Sun(ヒドゥン・サン)」を製作、それぞれの目線で「好奇心」を表現した。

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文=フォーブスジャパン編集部 写真=平岩亨

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