これまで米政府とNASAは、地球低軌道は民間に委ねる方針を掲げてきた。その実現のために進められてきたのがNASAの民間宇宙ステーション計画「CLD」(商業低軌道目的地)だ。同計画のもと、米国では主に4社がステーション構築を目指している。
第1回選考で選ばれたアクシオム社は、「アクシオム・ステーション」の最初のモジュールを2028年に打ち上げる見込みであり、第2回の選考で選ばれたボイジャー社(スターラボ)とブルーオリジン社(オービタル・リーフ)は、現時点ではフェーズ1(基礎設計)の段階、またはそれを完了した状態にある。さらに2025年8月に選定方式が見直されたことで、2回目の選考で選定されなかったヴァスト社(ヘイヴン1)にも同計画に途中参画する資格が与えられた。

しかし、NASAのジョエル・モンタルバーノ氏(宇宙運用担当・代理副長官)は、「これまで私たちは打ち上げ市場、宇宙観光、ISSにおける研究開発(などのステーション需要)が急成長することを期待していたが、そうした状況にはなっていない」と述べ、さらに、「現在のアプローチでは、NASAが資金提供できるのは民間1社の商業ステーションに限られる」との見解を示した。
民間企業によるステーション開発には、NASAを介して国からの補助金が供給されているが、そのステーションを民間企業が維持するには、政府系機関がそれを顧客として有償利用し、企業の収益化と事業継続を下支えする必要がある。こうした政府による支援制度を「アンカーテナンシー」という。しかし、市場需要が見込めず、それを埋めるためにはNASAの資金的負担が増すが、予算が足りない。つまりNASAにおいては、需要の見込み違いで箱を発注し過ぎたといえる。
こうした状況を改善するためにNASAは、今回の方針転換を発表した。これは低軌道の民営化から、一時的な再国有化を意味するものだ。モンタルバーノ氏は、「今回発表したこのハイブリッド方式であれば、初期リスクを政府が負担し、その後の民間モジュールの需要を見定めながら、市場原理にもとづいて進めることが可能になる」と説明した。また、NASA長官ジャレッド・アイザックマン氏は、「NASAは軌道経済を強制的に存在させることはできないが、それを活性化するためにできる限りのことを実行する」と述べ、今後、民間によるISS滞在プログラム「PAM」などをさらに促進し、低軌道における商業機会の拡大を宣言した。


