前回の「AIの勝ち組・負け組」に関するレポートでは、主要なAI企業の多くでフリーキャッシュフローが急落している実態を明らかにした。だが、話はそれで終わりではない。フリーキャッシュフローの低下は、炭鉱のカナリアだ。大手テックの大半は売却すべき局面に来ている。
これらの大手テック企業は長年にわたり、他の企業とは一線を画してきた。数十億ドル規模のコア利益、高いフリーキャッシュフロー(FCF)、強固な利益率、そして業界最高水準の投下資本利益率(ROIC)を生み出してきたのである。
ところが、巨額のAI投資が、この長年の常識を覆しつつある。資産の軽いテック企業を、素材、資本財・産業など、従来から資本集約的とされるセクターと同様の資本集約型ビジネスへと変貌させている。
アスワス・ダモダランはこう述べている:
「…AIは、喧伝されるような生産性向上を実現するとしても、全体としては収益性を押し下げ、ビジネスの最終局面を勝ち抜くことをさらに難しくする可能性が高い」
市場が見据えるAIの未来では、大手テックは資本支出(capex)が資本財・産業並みとなり、リターンも同水準になる。そうなれば、今年すでに見られた調整後であっても、AIテック大手が現在の天文学的なバリュエーションを維持できると正面から主張するのは難しい。
表面上はすべて順調に見える
金融分析の多くは損益計算書に過度に焦点を当てるため、投資家は水面下で状況が悪化していることに気づきにくい。例えば、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、メタ(META)の税引後営業利益(NOPAT)マージンは、2021年から2025年にかけて上昇している。
図1にある企業のうち、2021年より2025年のNOPATマージンが低いのはオラクル(ORCL)だけだが、それでも直近数年ではNOPATマージンは改善している。
図1:AI投資企業のNOPATマージン:2021〜2025年
オラクルは会計年度の都合により、データは2021年11月から2025年11月まで。その他はすべて2021年12月から2025年12月までのデータ
だが大手テックのFCF効率は低下している
前回の「AI株を沈没させかねない5000億ドル超の隠れた会計トリック」で指摘したとおり、これらテック大手のフリーキャッシュフロー(FCF)を吸い上げるオフバランス債務が存在する。
売上高1ドル当たりにどれだけFCFを生み出しているかを示すFCFマージンも、悪化している。
歴史的に、大手テック企業は強いFCFマージンを生み出してきた。だが2025年は、そうではない。
アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタ、オラクルのFCFマージンは、2021年から2025年にかけて大幅に低下した。
オラクルは、良くない意味で際立っている。同社のFCFマージンは2024年の-15%から2025年には-317%へと低下し、文字どおり図2のスケール外だ。
アップルのFCFマージンも低下したが、2025年でも76%と、図2に示す企業を大きく上回っている。
前回レポートのFCF分析と同様、アルファベットは(アップル同様に)他の企業群から抜きん出ており、2025年のFCFマージンはアップルに次ぐ2番目の高さである。
とはいえ、ここまでの支出を前にして疑問が残る。これらの企業は、いずれキャッシュ損失を回収できるのだろうか。
図2:AI投資企業のFCFマージン:2021〜2025年
オラクルは会計年度の都合により、データは2021年11月から2025年11月まで。その他はすべて2021年12月から2025年12月までのデータ
バランスシートの効率も悪化する
大手テックは、売上高1ドル当たりに生み出すFCFが減っているだけではない。投下資本1ドル当たりに生み出す売上高も減っている。つまり、バランスシートの効率が崩壊しつつある。
アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタ、オラクルの投下資本回転率(バランスシート効率の指標)は、2021〜2025年にかけて着実に低下した。図3を参照。
図3:AI投資企業の投下資本回転率:2021〜2025年
オラクルは会計年度の都合により、データは2021年11月から2025年11月まで。その他はすべて2021年12月から2025年12月までのデータ
究極的な影響──投下資本利益率の低下
大手テックの着実なオペレーション効率(NOPATマージン)では、バランスシート効率(投下資本回転率)の大幅な低下を相殺できず、その結果としてROICも低下している。
図4に示した各社のROICは、アマゾンを除き、2021年以降低下している。
- アップル:2025年は76%(2021年の92%から低下)
- アルファベット:2025年は40%(2021年の53%から低下)
- マイクロソフト:2025年は28%(2021年の44%から低下)
- メタ:2025年は28%(2021年の40%から低下)
- オラクル:2025年は10%(2021年の23%から低下)
図4:AI投資企業の投下資本利益率:2021〜2025年
オラクルは会計年度の都合により、データは2021年11月から2025年11月まで。その他はすべて2021年12月から2025年12月までのデータ
アップル、アルファベット、マイクロソフト、メタ、そしてアマゾンでさえ、ROICは依然としてカバレッジ対象企業の上位5分位に入る。しかし下降トレンドは始まっており、AI投資が続く限り継続する可能性が高い。
AI投資はまだ序盤だと考えている。なぜなら、これまでの焦点はハードウェアとインフラに偏り、AIに与えるデータに向いていないからだ。私は、機械に深い領域知を付与できる高品質データセットを獲得するための、まったく新たなAI投資狂騒が起きると見ている。AIが、専門家が投げかける問い、あるいは深い専門知識を要する問いに対して、正確で真実の答えを返せるようになれば、AI起点の売上高と利益が爆発的に増えることが期待できる。それまでは、AIの有用性は、巨額のAI投資に見合う十分なリターンを生むにはほど遠いと見ている。
大手テックのAIトレードに価値は残っていない
AIトレードでまだ割安さを探しているのか。ほかを当たるべきだ。キャッシュフローが低下しROICが悪化するなか、本レポートの銘柄はどれも非常に割高に見える。
本レポートの各銘柄は、経済的簿価、すなわち無成長価値を大きく上回って取引されている。これは、市場が現状から利益が大幅に伸びることを織り込んでいることを意味する。
いずれ、キャッシュバーンとROICの縮小が、キャッシュフロー創出とROICの上昇へと急反転しなければ、これらの株価が現在のバリュエーションを維持し、大幅な下落を回避するのは難しい。
最もリスクが高く見えるのは、アマゾンとオラクルだ。キャッシュバーンが最大で、株価と経済的簿価の倍率(PEBV)も最悪である。一方で、マイクロソフトは「最も割安」なバリュエーションとして目立つが、これは図5の他のテック大手と比べて相対的にそう見えるにすぎない。同社のPEBVが2.3ということは、市場がTTM水準から利益が2.3倍に伸びると見込んでいることを意味し、決して小さな期待ではない。
現在の価格で購入する投資家は、将来のキャッシュフロー成長に関する期待がすでに株価に高水準で織り込まれていることを理解すべきだ。とりわけ、私が確認しているFCFマージン、投下資本回転率、ROICの低下を踏まえるとなおさらである。
図5:AI投資企業のPEBV比較:直近12カ月(TTM)2026年2月23日時点



