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2026.03.31 01:02

スマートグラスのプライバシー論争、本当の争点は「インセンティブ構造」にある

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「古いものが新しくなる」というお決まりの展開のとおり、テレビCMでは再びジャスティン・ロングとジョン・ホッジマンが視聴者を説得しようとしている。ロングが「クールで消費者寄り」の製品(2000年代半ばはMac、いまはオゼンピック)を体現し、ホッジマンは「堅苦しい企業向け」の製品(PC、ジェネリックのGLP-1製剤)を体現する、あの構図だ。そして近い将来、このキャラクターたちがスマートグラスとして再登場する姿を想像するのも難しくない。ロングがEven RealitiesMentraのような新興企業を、ホッジマンがメタやグーグルのような巨大企業を代表するという構図だ。

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この対立構造はしばらく前から形成されつつあったが、ここ数週間でより鮮明になってきた。メタに関する2つのニュースがスマートグラスに対する認識を変えたのだ。まず、メタが「Name Tag」と呼ばれる顔認識機能を開発中であることを示す内部文書が流出。その直後、外部委託された作業員がメタのグラスで撮影された映像を閲覧できることが報じられた。これらの報道はユーザーの反発を招いたが、報道を受けて実際にグラスの使用をやめた人がいるかどうかは不明だ。しかし消費者心理が変化し始めている中、グーグルが近く発売するグラスも同様の批判を免れるのか、そしてこれが独立系プレーヤーに競争の余地を与えることになるのかは、まだ見通せない。

市場に食い込む可能性のある独立系プレーヤーの1つがEven Realitiesだ。2023年に設立され、現在は中国・深圳に本社を置いている。同社のグラスにはカメラは搭載されていないが、音声をキャプチャして文字起こしする機能を備えている。ただし音声は保存されない。最新バージョンのG2には自社開発のアプリがいくつか搭載されており、サードパーティ開発者向けのアプリストアも間もなく開設予定だ。

創業者のウィル・ワン氏は、自社のグラスや他の独立系プレーヤーとメタやグーグルとの決定的な違いは、インセンティブ構造にあると語る。「プラットフォーム企業であれば、インセンティブはより多くのデータを集めて自社モデルを訓練することにある」と同氏は言う。「スマートグラスを持つ動機は、巨大なマシンを動かすことにあるのだ」。ワン氏は、責任あるハードウェア管理のモデルとしてアップルを挙げた。デバイスが見聞きしたものを収益化するのではなく、デバイスの販売から利益を得る企業だ。「アップルはプラットフォーム企業からあなたを守る門番だ」と同氏は言う。「スマートグラスでも同じ役割を果たす存在が必要だ。そしてそれはグーグルやメタではありえない。それは彼らのビジネスの本質ではないからだ」

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同氏のような独立系企業は、オープンなシステムを構築し、データ収集や自社アプリ群の押し付けというインセンティブなしに、純粋にハードウェアの販売に注力できる。メタの現行グラスの最大の欠点の1つは、グラス上のアプリのほぼすべてがメタ所有のアプリであるという点だ。グラスからインスタグラムを閲覧したいなら問題ないが、グーグルマップを使いたい、Gmailアカウントをチェックしたいという場合には、機能的にはほとんど役に立たない。

Even Realitiesだけがこの分野のプレーヤーではない。2024年に設立されYコンビネーター出身のMentraも、オープンソースモデルを採用している。Even Realitiesとは異なり、同社のグラスにはカメラが搭載されている。ウェブサイトに掲載されたミッションステートメントによると、「私たちは、テクノロジーや体験が巨大テック企業に支配される未来から人々を守ることを誓う」としている。

これらの巨大テック企業には、少なくとも現時点では大きなアドバンテージがある。メタはスーパーボウルでCMを放映し、最も注目を集めるセレブリティに自社のグラスを着用させた。グーグルも自社のグラスを発売する際に同様のことをしないと考える理由はない。グーグルはマップやGmailのようなアプリを自社デバイスでのみ動作させることを選択できるし、メタもインスタグラムやWhatsAppで同様のことができる。ワン氏によると、Even Realitiesで最も人気のある機能はテレプロンプターと翻訳だという。メタにもこれらの機能はあり、グーグルもおそらく搭載するだろう。

真の問題は、プライバシーに対するユーザーの懸念が利便性やブランド認知度を上回るかどうかだ。Even RealitiesやMentraのような企業は、グーグルのChromeに対するFirefoxのような存在になるのだろうか──愛される小規模プレーヤーではあるが、デフォルトにはなれない存在として。

そしてメタの最近の論争は、スマートグラス市場が本格的に立ち上がる前に、市場全体にダメージを与えてしまうのだろうか。「スマートグラスは悪だ」という認識が広まれば、誰かに詰め寄られたときに「これはメタのグラスではなくMentraのグラスです」と説明しても、あまり効果はないかもしれない。だが独立系グラスが本当に成功を収めることができれば、潮目が変わり始める可能性もある。

forbes.com 原文

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