スクエア、ヤフー大物幹部を引き抜き 金融部門長に起用

今回の引き抜きの対象となった元ヤフー・開発主任のジャクリーン・レイエス氏(左)<br />(Photo by Andrew H. Walker/Getty Images for Yahoo)


株式上場を控えた決済会社スクエアが、ヤフーの大物幹部を引き抜いた。スクエア社は10月19日、ヤフーで開発主任を務めたジャクリーン・レイエスを同社の金融部門、スクエア・キャピタルの統括責任者に任命したと発表した。

ヤフー社で外交的な女性幹部として知られたレイエスは、CEOのジャック・ドーシーの直属の部下となる。この3年間、社内マネージメントに苦しむヤフーCEO、マリッサ・メイヤーにとっては、また新たな苦難が訪れたかたちだ。

ヤフーからは先月も、マーケティング主任のKathy Savittが映画スタジオのSTXエンタテインメントへ移籍。昨年はメイヤーの肝いりでグーグルから引きぬき、COOに起用したHenrique de Castroを「目標売上の不達成」を理由に解雇したが、その際には5800万ドル(約69億円)もの巨額な退職金を支払っている。

レイエスはヤフー在籍中に買収案件を担当し、直近ではヤフーが保有する270億ドル分のアリババ株のスピンオフ(分離)案件に関わっていた。スクエア側にとってレイエスの採用は、重要な意味を持つ。スクエアCEOのジャック・ドーシーはツイッターのCEOを兼任しているが、彼を補佐する意味でも彼女の参画はありがたい。スクエアは先週、ドーシーがツイッターのCEO就任を明かした直後、IPO申請書類を提出したことをアナウンスしていた。

「ジャッキー(レイエス)の金融業界への知識の深さ、さらにテック業界での経歴は、彼女のスクエア・キャピタルでのポジションにパーフェクトなものだ」とドーシーは声明の中で述べた。

上場を前にスクエアではここ数ヶ月、ドーシーの任務の軽減に動いてきた。二年の歳月をかけて作りあげた重役メンバーには既に、アマゾンでAWS幹部を務めたアリッサ・ヘンリー、元グーグルのFrancoise Brougher、CFOのSarah Friarという3名の女性重役が居る。レイエスは同社の4人目の女性重役となるが、社内のダイバーシティを推奨するドーシーにとっては、この点も誇らしいポイントになるだろう。

「スクエア・キャピタルは従来の金融機関がリーチ出来なかった分野に進出します。この任務に就けたことを誇りに思います」とレイエスは述べた。

ヤフーに三年間勤務したレイエスの離職は、メリッサ・マイヤーにとっては多大な損失だ。彼女はレイエスをアリババとの交渉役として重宝していた。レイエスは上場前のアリババの重役らに、約2年の間仕えた経歴がある。ヤフー入社前にはApax Partners やゴールドマン・サックスでの勤務歴がある。ヤフーでレイエスが抜けた穴を誰が埋めるかは明らかにされていない。ヤフーの広報担当はレイエスの離職を認めたが、それ以上のコメントは拒絶した。

今月初旬から相次ぐ、スクエアやツイッターからの発表は、2社のCEOを兼任するジャック・ドーシーの任務がいかに膨大であるかを物語る。今後数週間の間で、ドーシーはスクエアの成長ポテンシャルについて投資家らを説得する必要がある。

スクエア・キャピタルの売上高は上場申請書類に記載されていないが、バランスシート上の「ソフトウェア及びデータプロダクト」と記載されたカテゴリには、2014年度に1200万ドルの売上を記録。その後、2015年の上半期のみで2090万ドルの売上を達成し、前年同期比で800%の成長率となっている。スクエアは2014年5月にスクエア・キャピタルを立ち上げ、今年8月時点で2億2500万ドル(約300億円)の融資枠を持つと発表していた。

スクエアはレイエスの採用と同時に、2人の重要メンバーを雇用した。元モルガン・スタンレーのHenry Domeniciをファイナンス部門のリーダーに。さらにアマゾンでマーケティング部門長を勤めたTed Kosev をプロダクトマネジメント部長に起用した。

文=ライアン・マック(Forbes)/ 翻訳編集=上田裕資

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