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2026.03.31 00:08

AIの収益は「プライベートモデル」が制する

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AIをめぐる喧騒の中で、シンプルな事実が見過ごされている。

プライベートAIモデルは最終的に、パブリックモデルよりも多くの収益を生み出すことになる。

両者の違いは何か。

パブリックモデルとは、GoogleのGemini、OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaudeなどを指す。これらは現在、世界の注目を集めている。いずれも同じ情報源(インターネット)で学習され、モデルは膨大(数兆トークン規模)で、数千億ドルの投資を引きつけ、その能力と技術は急速に進化している。

現在の主流な見方では、これらのモデルが世界中のあらゆる情報を取り込み、最終的には2〜3社が市場を支配することになる——検索におけるGoogle、SNSにおけるMeta、クラウドにおけるAmazonのように、AIでも圧倒的な存在になる。勝者総取りになるというわけだ。

だが、そうはならない。

5年後、AIが生み出す収益の70%はパブリックモデルではなく、プライベートモデルから生まれる。では、プライベートモデルとは何か。

まず、いくつかシンプルな質問をしたい。あなたの銀行口座情報がパブリックモデルに取り込まれると思うだろうか。保険証券がパブリックモデルに入ると思うだろうか。勤務先の給与システムがパブリックモデル内で運用されることがあると思うだろうか。3つの質問すべてに対する答えは、当然「ノー」である。

では、それらはどこに行き着くのか。あなたの銀行、保険会社、勤務先が構築するプライベートモデルである。理由は一言で言えば「信頼」だ。自分の銀行口座と「会話」したいとき、あなたはBank of Americaのモデルを使うことになる。なぜなら、個人の金融データをその会社に預けることを信頼しているからであり、同社が数十年にわたって蓄積してきた独自の知識と経験がAIシステムに学習されているからだ。

あなた:「ねえ、当座預金はいくら入っている?」

BofAモデル:「2340ドルです」

あなた:「340ドルをクレジットカードの返済に充てられる?」

BofAモデル:「もちろん。今すぐ実行しましょうか?」

あなた:「うん」

BofAモデル:「お客さまの通常の行動パターンとこれまでのお取引から判断すると、今後30日間はおそらく1000ドルは必要ないでしょう。その分をマネーマーケット口座に移して、より高い利回りを得られるようにしましょうか?」

あなた:「いいね。今すぐやって」

BofAモデル:「承知しました。クレジットカードの返済と1000ドルのマネーマーケットへの移動を行いました。現在、当座預金で利用可能な残高は1000ドルです」

企業は自社のウェブサイトをAIに置き換えていくことになる。車を修理に出すとき、BMWのAIと会話して問題を診断し、修理の予約を入れる。東京行きの航空券を買うとき、日本航空のモデルと対話する。本を買うとき、Amazonのモデルとやりとりをするようになる。

これはすでに起きている。先週、かかりつけ医を訪れたところ、そのクリニックでは2つのプライベートモデルを使用していると教えてくれた。1つ目はOpenEvidenceで、New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)やJournal of the American Medical Association(米国医師会雑誌)など、信頼性の高い査読済み科学文献のデータで学習された医療専門家向けモデルだ。診断、食事療法の推奨、薬理学的有効性データなど、最新の医学知識に活用されている。2つ目はAbstractive Healthで、患者の医療記録を要約し、医師が患者の病歴と対話できるようにするものだ。この2つのプライベートモデルによって、私の主治医はより効率的に、より賢くなっている。

パブリックモデルがいかに注目を集めていようと、収益の大部分はそこからは生まれない。プライベートモデルから生まれるのだ。

とはいえ、パブリックモデルが将来的に役割を持たないわけではない。3つの重要な目的を果たすことになる。

  1. AIイノベーションをリードする——魅力的な新機能や新たな能力は、まずパブリックモデルに登場する。
  2. 一般知識の最良の情報源となる。この点で、パブリックモデルはGoogle検索に取って代わり、最終的には収益性の高い広告やコマースモデルを牽引することになる。
  3. プライベートモデルの基盤モデル(ファウンデーションモデル)となる。

3番目はどういう意味か。今後数年間、プライベートAIシステムは、RAG(検索拡張生成)のようなコンテキストエンジニアリング技術や、ファインチューニング(微調整)のような事後学習アプローチを用いて構築される。パブリックモデルは多くのプライベートモデルの基盤となり、構文(読み書きの能力)と推論(考える能力)を提供する。つまり、プライベートモデルはパブリックモデルと同等の読み書き能力を持ちながら、顧客データは分離して保護される。AnthropicのModel Context Protocol(MCP)やGoogleのAgent2Agent(A2A)といった提案中のサービスを活用することで、プライベートAIシステムとパブリックAIシステムが動的に連携することが可能になり(そして期待されるようになり)、双方の長所を取り込めるようになる。

これらはすべて何を意味するのか。

  1. 現在、大規模な資本の誤配分が起きている——パブリックモデルに資金が集中しすぎる一方で、プライベートモデルへの投資は不足している。賢明な投資は、プライベートモデルに転換されれば価値が高まる大量のデータを保有する企業を探すべきだ。金融データ、顧客データ、マーケティングデータ、取引データ、サプライチェーン情報、医療データなどを考えてみてほしい。コロニーの法則(そう、私はこれほど謙虚なのだ)を考えてみてほしい。「AIによって、情報の価値は毎年2倍になる」。これがそのデータを所有する企業の価値を押し上げることになる。
  2. パブリックLLM(大規模言語モデル)のビジネスモデルは、プライベートLLMのビジネスモデルほど明確ではない。確かに、一般消費者向けにデータを提供し(おそらく広告やコマースの仕組みで、詳細は今後決まる)、企業にプライベートモデルの基盤として提供することで収益を上げるだろう。しかし、これでは数千億ドルのスタートアップ投資に対するリターンを生み出すには十分でないかもしれない。ForresterのアナリストRowan Curranが好んで言うように、「言語モデルはビジネスモデルではない」のだ。
  3. ForresterのTed Schadlerが提唱するもう1つの可能性がある。パブリックモデルは収益を求めて、企業向けにプライベートモデルの「ホスティング」に転じるかもしれない。このシナリオでは、パブリックモデルは従来型のエンタープライズソフトウェア企業のようになり、独自データを取り込み、パブリックモデルをプライベート版にファインチューニングし、そのモデルを顧客向けに運用する。OpenAIやAnthropicは最終的にOracleやSAPのような存在になり、システムを構築して企業に月額料金を課してそのシステムを運用する——まさに「未来への回帰」だ。
  4. 企業は今すぐプライベートモデルの構築を始めなければならない。確かに、AIは組織の効率化やプロセスの構築・運用の迅速化に役立つ。だが、これは余興にすぎない。本当のAIの勝負は、顧客を獲得し、サービスを提供し、維持することにある。そしてそれこそが、プライベートモデルのビジネスモデルが最も力を発揮する領域となるのだ。

本稿はForrester CEOのGeorge Colonyによる寄稿であり、こちらに掲載されたものである。

forbes.com 原文

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