長期視点で設計されるラグジュアリー
イベントの後半では、ケル氏のほか、3Dコンピューター・ニッティング技術を駆使した現代生活に最適なニットウェアを製造・販売しているCFCLの創業者/クリエイティブディレクターである高橋悠介氏と、トムウッドのCEOであるモーテン・イサクセン氏も参加。『確固たる信念:リーダーシップ、レガシー、そして「正しさ」の追求とその代償』をテーマにパネルディスカッションが行われた。司会はアメリア・ユール氏が務めた。
「長く使える商品を作り続けるのはなぜ重要なのか」という議題では、モーテン氏が、「ジュエリーは究極的には私たちの人生よりも長く残るもの。一方、ファッションは毎シーズンのために作られることが多い」とジュエリーとサステナビリティの親和性について指摘。同氏はさらに、「責任について語るのは簡単だが、それを実践し続けることははるかに難しい。特にジュエリー業界では透明性を保つには忍耐が必要だ。原材料の採掘現場にまでイノベーションを行き届かせる必要がある」とも述べた。
責任ある永続的な製品を作るというブランドの使命を推進しているモーテン氏は「私たちのデザインは2026年の今だけに向いているわけではなく、10年、20年という時を経た次世代でも美しく見えなければいけない」とも口にする。同社では製造背景の透明化にも取り組み、業界では珍しいサプライチェーンの開示を進めているが、それは競争上のリスクを伴う判断でもあるという。
「サプライチェーンを公開することは、競争優位を手放すことにもつながる。しかし、それでも透明性を選ぶことが、業界全体を前に進めるためには必要だと考えている」(モーテン氏)
テクノロジーが支える持続可能性の実装
高橋氏は、「サステナビリティはすでにデザインの一部となっている」と語る。3Dコンピューター・ニッティング技術を用いることで、製造工程の無駄を削減し、少ない資源や人員でも生産が可能になる仕組みづくりを進めてきた。テクノロジーを活用することで、より効率的で持続可能なものづくりが可能になると指摘した。
それぞれ異なる立場から、持続可能性の実装に向けた課題と可能性が示されたなか、イベントの最後にモーテン氏は「今回は様々な業種をまたいで多くの方々に参加してもらえた。企業や国境を越えて、新たな動きが出てくると思う」とコメント。
一方で、完全な透明性や持続可能性の実現にはコストや構造的な制約も伴う。こうした取り組みがどこまで持続可能なモデルとして定着するのかは、なお問われている。
モーテン氏は「私たちとしても、方向性を示すビーコンのような存在でありたい。その役目の1つは社会に大きな影響を与えること。もう1つとして、業界のこれまでのやり方を変革していきたい」と、締めくくった。


