ファッション

2026.03.31 14:15

ラグジュアリーはどこへ向かうのか 「責任」が再定義する価値と競争軸

基調講演を行なったゲオルグ・ケル氏 © Tom Wood / Photo: Daisuke Takeda

基調講演を行なったゲオルグ・ケル氏 © Tom Wood / Photo: Daisuke Takeda

ノルウェー発のジュエリーブランドであるトムウッドは、3月24日に駐日ノルウェー大使館で、『対話を通じて、変革を加速させる Vol.2』を開催した。環境負荷や資源制約が企業活動の前提となるなか、ラグジュアリーにおいても「責任」が新たな価値基準として問われ始めている。本イベントは、その現在地を示す場となった。

トムウッドは2013年にモナ・イェンセン氏によって設立され、スカンジナビアのシンプルさと革新性に根ざした、控えめながらも個性的なデザインのジュエリーで知られている。クラフトマンシップと革新性へのこだわりを軸とした商品は、オスロと東京に構える旗艦店のほか、200店舗以上の著名な小売店で展開され、世界的な人気を博している。

また、「責任あるジュエリー協議会(RJC)」や「科学的根拠に基づく目標イニシアティブ(SBTi)」の認証も受け、時計・宝飾品企業が協働で気候変動対策や資源の保全などに取り組む「ウォッチ&ジュエリー・イニシアティブ2030(WJI 2030)」にも参加。持続可能性への強いコミットメントのもと、品質と環境責任に重きを置く。

© Tom Wood / Photo: Maiko Kimura & Calle Huth
© Tom Wood / Photo: Maiko Kimura & Calle Huth

不可逆な変化としてのサステナビリティ

今回のイベントも、トムウッドと駐日ノルウェー大使館によって、責任あるラグジュアリーの未来を牽引する業界のリーダーや変革者などを招いて実施。昨年に続いて2回目の開催となり、参加者がつながりを築いて意見を交わすことによって、ポジティブな変化を生み出す力になるという狙いがある。

イベント冒頭では、駐日ノルウェー大使のクリスティン・イグルム氏が登壇。「業界のリーダーや変革の担い手、先見の明を持つ人々が一堂に会することが非常に重要」と開催の意義を語った。

2部構成の前半では、AIを活用して次世代の投資家を支援するテクノロジー企業アラベスクの会長を務める、ゲオルグ・ケル氏の基調講演を実施。『創造に値する世界:リーダーシップ、クラフツマンシップ、そしてグローバルな責任からの教訓』がテーマだ。

© Tom Wood / Photo: Daisuke Takeda
ゲオルグ・ケル氏 © Tom Wood / Photo: Daisuke Takeda

ケル氏は約30年にわたる国連でのキャリアも持ち、世界最大の企業サステナビリティ・イニシアティブである「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」を構築。さらに、責任投資原則(PRI)、責任経営教育原則(PRME)、持続可能な証券取引所(SSE)など、UNGCの姉妹イニシアティブの構想と立ち上げも指揮した経験がある。

ケル氏は、サステナビリティはもはや「取り組むべき理想」ではなく、「対応しなければ企業が成り立たなくなる現実」になりつつあると強調。気候変動による災害や資源制約は、保険料や原材料価格の上昇といった形で企業活動に直接影響を及ぼし始めており、市場そのものが変化を織り込み始めているという。企業にとっては「やるかどうか」ではなく、「どう対応するか」が問われる段階に入っている。ケル氏は、短期的な揺り戻しがあっても、気候変動や資源制約を背景に、サステナビリティを重視する流れはすでに広がりつつあり、今後は主流になっていくとの見方を示した。

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文=小谷紘友 編集=松崎美和子 写真=トムウッド提供

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