暗号資産

2026.03.31 16:30

「OpenClaw」台頭が加速させる、AIエージェント経済と暗号資産――熱狂の正体と限界

Stockinq / Shutterstock.com

暗号資産業界の熱狂に対し、「玩具の段階にすぎない」とする懐疑論も根強く存在

ただし、AIエージェントと暗号資産のポテンシャルに誰もが熱狂しているわけではない。「多くの人は、すでにこれが広く実用化されているかのように誇張している。しかし、実際のところ現時点では、ここで語られているものの大半はまだ玩具のような段階にすぎない」と暗号資産ベンチャーキャピタルDragonflyのマネージングパートナーであるハシーブ・クレシは述べている。

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彼は、AIエージェントがデータや計算資源、その他のサービスに対して、小額で継続的な支払いを生み出す新たな流れを生む可能性自体は認めている。ただし、それがマクロな規模で意味を持つためには、膨大な数のAIエージェントが必要になると指摘する。最終的に資金をコントロールしているのは人間であり、需要の中心も依然として人間がいるからだ。

IoTやメタバースと同じ過ちを繰り返すと強く警告

クレシはまた、業界が新たなトレンドを革命と取り違えるという、これまでと同じ過ちを繰り返していると懸念する。「暗号資産の世界には、自分たちの言説をすぐに信じ込んでしまうために、投資判断を誤る人が多い。こうしたことは毎回繰り返されている」と彼は言う。

彼は、過去に盛り上がったIoTやメタバースの熱狂を例に挙げる。その際も支持者は、すべてが一夜にして実現し、その中心に暗号資産が位置づけられると信じていた。「暗号資産が重要な役割を果たすのは確かだ。物語の一部にはなる。ただし、それがすべてではないし、すぐに実現するものでもない」。

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AIエージェント時代でも、カードネットワークの技術は依然として機能

AIエージェントによる商取引の普及が暗号資産を後押しし、従来の金融(TradFi)の既存勢を置き去りにするという見方は、広く共有されているわけではない。

垂直型AIやソフトウェア企業に投資するベンチャーキャピタルSix Point Venturesのゼネラルパートナー、トレース・コーエンは、「AIエージェントの時代にはVisaやマスターカードのような既存勢は重要でなくなる」というXで広く語られている見方を一蹴する。「そんなことは起きない。どれだけ古くても、彼らの技術は機能している」と彼は言う。カードネットワークは今も決済の基盤を握っており、これまでの歴史を見ても、有望な新興企業に置き換えられるよりも、むしろ買収や統合によって新興企業を取り込む可能性のほうが高い。ただしコーエンは、銀行の規模が小さく、信頼性や連携の面で課題が残る海外市場では、ステーブルコインのほうが適している可能性はあると付け加えた。

普及への課題は、ステーブルコインが確立できていない「信頼のレイヤー」

より大きな課題は、従来の決済企業が何十年もかけて築いてきた「信頼のレイヤー」を再構築することにある。Zero Knowledge Consultingのディレクターであり決済企業のアドバイザーでもあるオリビア・チョウは「Visaやマスターカードが優れているのは、ルールを定義している点にある」と述べている。想定外の事態が起きた場合に誰がどの時点で責任を負うのか、参加者がネットワークに加わり、その保護を受けるために何が求められるのか──そうした枠組みを整備している。

「ステーブルコインは、これに相当するレイヤーをまだ確立できていない。不正の管理やリスクの管理、そして一般の利用者に問題が起きた場合にどう対応するのか──『自己管理を重視するからリスクも引き受ける』という考えではない人々に対して、どう保護を提供するのかが問われている。この点が解決されない限り、主流としての普及は進まない」と彼女は続けた。

カードネットワークはすでにAIエージェントによる取引への対応を進めている。AIによる商取引は彼らのビジネスを脅かすというより、むしろ拡大させる可能性があるとチョウは指摘する。「これがうまくいけば、既存の事業を食い合うことにはまったくならない。むしろ影響力は強まり、市場での支配力は強固になる。なぜなら彼らは単なる決済処理業者にとどまらず、サービスの発見の入り口にも関与するようになるからだ」。

資産のトークン化と世代間の資産移転が、暗号資産業界に新たな機会をもたらすか

ただし、決済は全体の一部にすぎない。従来型の資産がブロックチェーン上へと移行する流れが進む中で、新たなポートフォリオ運用の基盤が静かに整いつつある。その初期の例としては、ブラックロックの20億ドル(約3180億円)規模の米国債ファンド「BUIDL」や、フランクリン・テンプルトンの10億ドル(約1590億円)規模の政府マネー・マーケットファンド「FOBXX」がある。そもそも株価指数とは、ルールに基づいて構成されたバスケットにすぎない。株式や債券、ファンドがトークン化されれば、AIエージェントが単に決済を行うだけでなく、資産を保有し、ポートフォリオを再調整し、従来の証券口座を介さずに市場間で資金を移動させるようになることが現実味を帯びてくる。

こうした可能性は、歴史上最大級の資産移転の時期と重なっている。今後20年で約84兆ドル(約1.34京円)の資産がベビーブーマー世代からその相続人へと移ると見込まれている。その多くは、ロビンフッドで投資を始め、すでに暗号資産ウォレットを保有し、選挙の結果からテイラー・スウィフトとトラビス・ケルシーがどこで結婚するかに至るまで、あらゆる対象に賭けることに抵抗のない投資家だ。

約4割の金融アドバイザーが今後10年で引退の見込み、資産管理に大きな空白が生まれる

資産運用アドバイザー業界そのものも高齢化が進んでいる。米国には約33万人の金融アドバイザーがいるが、その平均年齢は56歳だ。調査会社Cerulli Associatesによると、そのうち約40%が今後10年で引退すると見込まれており、個人投資家の資産管理に大きな空白が生まれる可能性がある。

布石を打ち始める暗号資産企業、MoonPayが複数のブロックチェーンに対応した規格を発表

こうした動きを見据え、暗号資産企業はすでに布石を打ち始めている。MoonPayは3月24日、AIエージェントが複数のブロックチェーンにまたがって資金管理や取引を行える「Open Wallet Standard」を発表した。MoonPayは、ニューヨーク証券取引所の親会社から評価額50億ドル(約7950億円)で新たな資金調達を検討していると報じられている。

イーサリアムのトレジャリー企業SharplinkのCEOで、ブラックロックで暗号資産戦略を率いたジョセフ・チャロムは、「今回の動きはこれまでの暗号資産のブームとは異なる」と語る。彼は、ステーブルコインやトークン化資産、ウォレットインフラといった暗号資産の進化と、ユーザーの嗜好や目的を理解するAI、そして世代間の資産移転が組み合わさることで、大きな変化が生まれると見ている。「投資家が自分たちが見逃していたものに気づけば、従来のやり方には戻れなくなるだろう」とチャロムは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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