暗号資産

2026.03.31 16:30

「OpenClaw」台頭が加速させる、AIエージェント経済と暗号資産――熱狂の正体と限界

Stockinq / Shutterstock.com

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暗号資産業界は長年一般層への普及を目指してきたが、大きな成果は上げられていない。一般の利用者には障壁が多すぎ、投機の場という印象を今ひとつ払拭できていない。

そんな業界が今、オープンソースの「OpenClaw」に代表される「AIエージェント」に活路を見出そうとしている。AIエージェントとは、人間の指示を受けてネット上のサービスを自律的に操作・決済するソフトウェアだ。銀行口座は開設できないが、暗号資産のウォレットは保有できる。即時に世界中へ24時間送金できる暗号資産の特性は、機械による自律的な決済と相性がいい。人間には使いにくかった暗号資産の仕組みが、機械にとってはむしろ好都合だという逆転の発想である。

米マッキンゼーは2030年までにAIエージェントが3兆〜5兆ドル(約477兆~約795兆円。1ドル=159円換算)の商取引を仲介すると予測しており、この市場を誰が制するかをめぐり、暗号資産企業、既存の決済ネットワーク、スタートアップが動き始めている。

「暗号資産はそもそも人間のためではなく、機械のために作られていた」――コインベースのCEOをはじめ、業界の主要プレイヤーがこの論法を掲げ始めている。ただし「現時点ではほぼ玩具の段階」という懐疑論も根強い。熱狂の正体と限界を検証する。

暗号資産はそもそも、AIエージェントのために作られたと主張し始めた業界

暗号資産はこの15年の大半にわたり、ただ資金を移すだけの単純なプロセスであっても、一般的な利用者に途方もない手間を強いてきた。人々は、12語のシードフレーズ(ニーモニックフレーズ)の暗記、ガス代の仕組みの理解を求められる。入力欄に誤ったアドレスを貼り付けただけで、資金が二度と戻らなくなる。またそれを受け入れる必要がある。

しかし今になって、その設計思想を正当化する新たな主張が持ち出された。「暗号資産は、そもそも人間のために作られたものではない」という議論が広がっている。その対象はAIエージェントだ。彼らは不眠不休で動き続け、使いにくいインターフェースを気にせず、シードフレーズを紛失することもない。BaseとPolygonとOptimismなど、乱立するL2(イーサリアムのLayer 2)の違いを理解するために、他の暗号資産保有者に頼ることもない。

コインベースCEO、AIファーストへの全面的な移行を打ち出す

コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、この考え方を強く推進する存在の1人だ。先日Xに「まもなく、人間よりも多くのAIエージェントが取引を行うようになる。彼らは銀行口座を開設できないが、暗号資産のウォレットは保有できる」と投稿した。最近のポッドキャストでは、「当社はAIファーストの姿勢に全面的に移行し始めている」とも付け加えた。

このような主張は、長年にわたり金融の変革を掲げながらも、実際には投機の再発明に終始してきた業界にとって、都合のよい新たな売り文句にも思える。だが同時に、ここ数年で初めての直感的に理解しやすい説明でもある。暗号資産は、混乱に満ちた領域ではあるが、従来の金融にはない特徴を備えている。人間の許可を必要とせず、ほぼ即時に、世界中どこへでも24時間いつでも資金を移動できる点だ。

マッキンゼーが予測するAIエージェント経済の規模は、暗号資産市場全体の時価総額を上回る

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2030年までにAIエージェントが3兆〜5兆ドル(約477兆~約795兆円)の消費者向け商取引を仲介する可能性があると予測している。これは現在の暗号資産市場全体の時価総額の約2兆4000億ドル(約381.6兆円)を上回る規模だ。

暗号資産分野最大級のベンチャーキャピタルParadigmのマネージングパートナー、マット・ファンはこう述べる。「この変化は、投資環境の捉え方やプロダクト開発の前提を大きく変える。今後はAIエージェントを前提に考える必要があり、顧客の大半は人間ではなくAIエージェントになると想定すべきだ」。

AIエージェントを前提に、業界各社が事業を根本から作り替えようと競争

ファンが立ち上げた決済スタートアップTempoを含む、数多くの暗号資産企業が、この新たなユーザー層(AIエージェント)に対応するため、事業をゼロから、あるいは根本から作り替えようと競争を繰り広げている。ブロックチェーンTronの創業者で、トランプ大統領の暗号資産プロジェクトの主要投資家でもあるビリオネアのジャスティン・サンは、この動きを「Web4.0」と呼び始めている(そもそもWeb3.0が本当に構築されたのかは疑問だが)。

既存の決済手段を使って暗号資産の売買を可能にするMoonPayは、ユーザーのファイルやアプリケーションと直接連携できるオープンソースのAIエージェント基盤「OpenClaw」がここ数カ月で急速に普及したことを受け、AI戦略を全面的に見直した。同社のプロダクト責任者であるケビン・アリフィンは、「MoonPayが賭けているのは、もはや美しいUX(ユーザー体験)に再投資する必要はないという考え方だ。AIエージェントそのものがインターフェースになるからだ」と語る。

AIエージェントがすべてを代行する時代は近いとされるが、現時点では本格的な規模に至っていない

これは、暗号資産の複雑な仕組みに関心を持てない、あるいは理解しようとしない人々にとっては朗報かもしれない。ユーザーはやりたいことをAIに伝えるだけでいい。ビットコインを購入する、金利の良い貸付サービスを探す、資産を運用する――そうした一連の処理をAIがすべて代行するようになる。

ただし、現時点ではこうした動きはいずれも本格的な規模には至っていない。

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翻訳=上田裕資

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