宇宙

2026.04.05 16:00

量子コンピュータを「検出器として活用」し暗黒物質を探索する日本の科学者たち

Shutterstock.com

Shutterstock.com

目に見えず、これまで検出もされていない粒子を探すのに、人類がこれまで発明した中で最も高度で複雑なコンピューターチップを使う──これ以上ふさわしい方法があるだろうか。

IQM Quantum Computersの共同創業者が筆者に語ったところによると、日本の研究者たちは現在、量子コンピュータを使って暗黒物質(ダークマター)の探索に取り組んでいるという。

暗黒物質とは、宇宙の全質量の最大85%を占める可能性があるとされる謎の物質だ。しかし現時点では、銀河や大規模な宇宙構造で観測される、他では説明のつかない重力効果を説明するための理論上の概念にとどまっている。科学者たちは数十年にわたり、地下に設置した検出器や粒子加速器、天体物理学的観測施設を建設して直接検出を試みてきたが、いまだ成功していない。

あくまでも「いまのところは」だ。

「宇宙の物質の大部分は暗黒物質であるはずですが、問題は誰もそれを検出できていないことです。だから、その正体がわからないのです」とIQMの共同創業者で最高グローバル渉外責任者のユハ・ヴァルティアイネンは語る。

そもそも、暗黒物質が本当に間違いなく、100%確実に存在するのかどうかすらわかっていないのだ。

しかし京都大学、東京大学、そして素粒子物理学を専門とする日本の研究機関である高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者たちは、量子コンピュータが暗黒物質の物理的証拠を見つけるための鍵になり得ると考えている。この研究グループは、量子コンピュータを材料設計やビジネスの最適化、創薬といった本来の用途に使うのではなく、暗黒物質の通過を示す可能性のある、微弱な電磁シグナルを走査(スキャン)するために活用している。

この発想は、ある特定の理論的な可能性に基づいている。暗黒物質が電磁場と弱い相互作用をもち、マイクロ波帯の振動を生じさせるかもしれないという仮説だ。こうしたシグナルは極めて微弱で、通常のノイズレベルのはるか下に埋もれている。だが、超伝導量子ビット(qubit:量子コンピュータの基本演算単位)を用いる量子プロセッサーは、設計上、ほぼすべての外部干渉を排除するよう作り込まれた環境で動作する。

この設計上の制約が、量子チップをある意味「理想的な暗黒物質検出器」にしてくれるのだ。

次ページ > ラジオのチューニングダイヤルを回して周波数を合わせるのと同じ要領

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事