宇宙

2026.04.05 16:00

量子コンピュータを「検出器として活用」し暗黒物質を探索する日本の科学者たち

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この種の量子チップは絶対零度近くまで冷却され、環境ノイズから厳重に遮蔽されている。しかし暗黒物質は通常の物質との相互作用が極めて弱いため、理論上はこの遮蔽を素通りして量子コンピュータと相互作用する可能性がある。もしそうした現象が起これば、そのわずかな相互作用がシステム内に微小な振動シグナルを生じさせ得る。

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この実験的アプローチの要となるのが、IQMの量子プロセッサーの基本構成要素である周波数調整可能な量子ビット(tunable qubit)だ。研究者たちはこの量子ビットの周波数感度を調整することで、暗黒物質のシグナルの候補となる周波数帯を効果的にスキャンし、一貫して現れる異常値を探すことができる。

これは本質的に、昔ながらのカーラジオのチューニングダイヤルを回して周波数を合わせるのと同じ要領で、量子コンピュータと暗黒物質の相互作用を探しているのである。

「量子ビットを特定の暗黒物質の周波数に合わせ、何らかの微弱なシグナルを検出できたとします。おそらく非常に弱いシグナルでしょう。しかし、チップ上のあらゆる場所で繰り返しそのシグナルが観測され、量子もつれ(quantum entanglement:複数の量子ビットが互いに強い相関を持つ現象)やチップの量子力学的特性を利用してその微弱なシグナルを増幅できれば、そして実験を行うすべての場所で一貫した現象が確認されれば、最良の場合には『量子チップを使って暗黒物質を検出した』と結論づけることができるでしょう」とヴァルティアイネンは語る。

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この実験を行うにあたり、日本の研究チームはIQMの54量子ビットの量子コンピュータ「Radiance」を、自前の施設に物理的に設置するのではなく、クラウド経由で利用している。IQMは研究チームに対し、量子ビットへの特別な低レベルアクセスを許可した。従来型コンピュータで言えば「ベアメタル」(OSなどを介さずハードウェアを直接操作する方式)に近い環境であり、これにより科学者たちは実験中の量子ビットの挙動をあらゆる細部まで把握できる。

もし暗黒物質の検出に成功すれば、物理学における最も長年の謎の一つが解明され、宇宙と宇宙構造に対する理解が大きく深まるだろう。

また、検出できなかったとしても、それは暗黒物質探索の長い道のりにまた一つ行き止まりが加わったことを意味するにすぎない。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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