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2026.03.31 13:00

テンセント社員がOpenClawに熱狂──中国でAIエージェントの普及が始まった

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テンセント(Tencent)の社内では、ロブスターが王様だ。テック業界のこの一角からは、AIエージェント(自律的に判断・行動するAI)の時代を鮮やかに映し出す報道が届いている。

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1998年設立のテンセントは中国の大手テクノロジー企業で、WeChatやQQなどのメッセージングプラットフォームで知られる。世界のゲーム市場で圧倒的な存在感を誇り、主要テック企業の株式を保有するほか、クラウド、フィンテック(金融テクノロジー)、AIサービスも提供している。テンセントはコミュニケーション、エンターテインメント、決済、企業向けツールを統合した巨大なデジタルエコシステムを構築し、世界中で数十億人のユーザーを抱えている。

では、テンセント内部では何が起きているのか。どうやら同社の社員たちは競うようにOpenClaw(オープンクロー)を自分のデバイスにインストールし、自社のシステム上で自由に動かしているらしい。

ご存じない方のために説明すると、OpenClawはエージェント機能を備えたオープンソースのAIパーソナルアシスタントだ。つまり、ユーザーの操作に受動的に応答するだけでなく、ニューラルネットワーク(神経回路網を模した機械学習モデル)による認知能力を備えているかのように、「実際に行動を起こす」テクノロジーであり、人間のユーザーにとって最善と「判断した」ことを先回りして実行する。

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この甲殻類をテーマにした(Clawとはカニのツメを意味する)デジタル技術の新潮流が広がるにつれ、多くの議論が巻き起こっている。一方では、OpenClawは生産性向上に大きく貢献する可能性がある。他方では、セキュリティ上の悪夢にもなりかねない。ファイルを勝手に削除したり、システムを危険にさらしたり、OpenClaw自体が新型のスピアフィッシング攻撃(特定の個人を狙った標的型フィッシング詐欺)の標的になる恐れもある。そのため、OpenClawの使用を禁止する企業も現れ、専門家は慎重に導入すべきだと警告してきた。

テンセントのOpenClawインストール・イベントに殺到する人々

しかしThe Informationなどの報道によると、テンセントでは「当たって砕けろ」式のアプローチが取られているようだ。

Business Insiderのリー・チョンミンは、テンセントのイベントに参加した際、大勢の人々がOpenClawをダウンロード・インストールする様子を目撃したと報じている。中国ではこのプロセスを「養龙虾(ロブスターを育てる)」と呼んでいるという。筆者はMITのコミュニティに近い立場にいるが、このような光景はアメリカでは見たことがない。

チョンミンはこう報告している──会場はすぐに満員となり、デモの最中、参加者たちは画面に釘付けだった。最前列では何十人もの人々がハサミの形を模して指をつまむ仕草をしており、その様子に思わずたじろいだ、と。

その先の話もなかなか興味深い。中国企業がこの──文字どおり脚とハサミのある──新しいAIアプリに本気で取り組んでいるこの事例から、筆者が読み取った重要なポイントが3つある。

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翻訳=酒匂寛

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