(1)中国がリードしている
筆者はロボティクスの最前線を取材する中で、ある明確なトレンドに気づいた。中国のほうがはるかに先を行っているのだ。北京ではロボットがマラソンを走り、街中を歩いて通行人に手を振っている。アメリカではそのような光景はまず見かけない──もっとも、筆者は最近、ボストンで開催予定のレースにヒューマノイドロボットが参加すると発表したばかりではあるが。
いずれにせよ、「ロブスターを育てる」人々で埋め尽くされた会場があるとすれば、その場所は「中華の国(Middle Kingdom。中原)」であって、「アメリカの中部(Middle America)」ではないだろう。アメリカ中部のほとんどの人は、ヒューマノイドロボットと握手したことも、会話したこともなく、そうした体験にはきっと強い違和感を覚えるはずだ。
(2)同調圧力が一役買っている
チョンミンは記事の中で、シルビア・ハンという若い社会人にインタビューしている。
「みんな、FOMO(取り残される恐怖、fear of missing out)に駆られているだけの部分もあります」とハンは語った。「中国の深圳では、AI の使い方が分からないお年寄りでも、とりあえずテンセントに行って何が起きるか見てみよう、という感じなんです」。
これはイベント参加者の1人の証言にすぎない。しかし、このグループイベントの様子を見ながらチョンミン自身が書いた感想に注目してほしい。
「イベント中にOpenClawをインストールする気はなかった。個人のデバイス上で自由に動かすという考えに抵抗があったからだ」と彼は書いている。「しかし、デモを見ているうちに、その判断を疑い始めた。周りの人々はすっかり没頭していた。スマートフォンを掲げている人もいれば、ノートパソコンを熱心に操作している人もいた」。
つまり、十分な情報に基づいて慎重に下した判断が、熱狂的な参加者に囲まれた空間に座っているだけで「揺らいで」しまったのだ。
筆者が言いたいのはこういうことだ──このテクノロジーが本格的にアメリカに上陸したとき、おそらく少なからぬ人々が、波のように次々と飛びつくことになるだろう。FOMOの力だ。
(3)頭脳ではない
もう1つ重要な視点がある。OpenClawはテンセントが開発したモデルではない。ある意味、誰のモデルでもない。しかしそれは、テンセントのネットワークの「頭脳」として機能しているわけではない。あくまでツールなのだ。人間のユーザーが自らの生産性を高めるための、アシスタント型AIである。これは、初期のChatGPTやClaudeにログインして使っていた時代とは大きく異なるアプローチだ。
あの時代を大規模言語モデル(LLM)の「メインフレーム時代」と考えてみてほしい──LLMは大規模な施設に集中管理されていた。今やAIエージェントはあらゆる場所に存在する。
このことの意味を、じっくり考えてみてほしい。今後の展開に注目だ。


