医師は毎週平均13時間、患者の医療記録を掘り起こし、質問に答え、高額な薬剤や治療が保険者にとって必要であることを証明する書類を準備している。これは「事前承認」と呼ばれる厄介で時間のかかるプロセスだ。結果として、患者にとって重要な薬の提供が遅れることがある。
臨床AIスタートアップLatent Healthの共同CEO兼共同創業者である28歳のスリラム・ソーマスンダラムは、これを「人間の計算問題」と呼ぶ。保険支払者と医療提供者という両端で、人が同じ書類を何時間もかけて確認しているからだ。「これは正真正銘の狂気であり、いまや本質的に、病気の患者ほぼ全員に起きていることだ」と彼は語る。
いまやAIは、事前承認に必要なデータのスキャンや質問への回答の多くを正確にこなせるようになったとソーマスンダラムは言う。Latent Healthが構築しているのは、同社が「臨床推論エンジン」と呼ぶものだ。医師の所見、検査結果、画像レポートなどのデータを取り込み、患者の病歴についての複雑な問いに答えられるAIシステムである。同社のAIエージェントは、保険者の基準に基づいて根拠を取りまとめ、人間の確認を経たうえで申請を提出することもできる。さらにLatentのAIは、最後に人が何時間も保留で待たされる事態を避けるため、医療提供者に代わって保険者へ電話をかけ、申請状況を確認することさえ可能だ。
「医療提供者は患者のケアをすることが好きだ。だが負担が大きすぎる。そこから抜け出す道は実質1つしかない」とソーマスンダラムは言う。「テクノロジーを採用しなければならない」
Latentのソフトウェアは、イェール・ニューヘイブン・ヘルス、UCSF、マウント・サイナイ、バンダービルトといった大規模な大学病院を含む45以上の医療システムで、薬剤師、医師、看護師に利用されている。幼なじみのソーマスンダラムとリシャブ・ジェインが2022年11月に創業した同社は水曜日、Spark CapitalとTransformation Capitalが主導し、Convictionほかが参加したシリーズAで8000万ドルを調達したと発表した。また、年換算の売上高は2000万ドル超だという。取引に詳しい人物によれば、この新たな資金注入により、同社の評価額は約6億ドルとなった。
とりわけLatentが狙うのは、がんなどより複雑な病態に処方される高額なスペシャリティ医薬品における事前承認プロセスだ。保険者がこれらの薬剤を給付対象とするために要求する書類や根拠は複雑で、解決が難しい問題であるうえ、薬剤師にとって膨大な事務負担になっている。
「これは正真正銘の狂気であり、いまや本質的に、病気の患者ほぼ全員に起きていることだ」
さらに、こうした薬を提供するスペシャリティ薬局が急速に増えていることも加わる。ルイジアナ州地域で42の病院と370のクリニックを擁する医療システム、オシュナー・ヘルスでは、スペシャリティ薬局が前年比30%成長していると、同社の最高薬剤責任者デボラ・サイモンソンは言う。「必要な人数を雇いきれなかった」と彼女は語る。「ワークフローを助ける何らかのツールに頼らない限り、その成長のボリュームを維持する方法はなかった」。AIはその穴を埋めた。特に、見つけにくい情報をかき集めるといった、時間を浪費しがちな作業においてだ。「Latentを使えば、探しているものを3〜4分で見つけられる」と彼女は言う。
ケースによっては、医師や薬剤師が申請状況の確認や、却下後の追加情報提供のために、保険者へ電話しなければならないこともある。これらの通話は往々にして長く、苛立ちを伴う。「AIにその電話をさせられるならいい。相手は患者ではなく支払者なのだから、伝えたいことははっきりしている」とサイモンソンは言う。「それに実際、AIのほうがずっと感じがいい。15分待たされることが2回もあったら、話す頃には機嫌がいいはずがない」
AIを人間の監督なしに保険判断へ用いることは、誤った却下を増やしかねない。特に、保険者が包括的なデータを欠いていたり、アルゴリズムが過去の給付判断(誤りや偏りがあり得る)で学習されていたりする場合はなおさらだ。1月のスタンフォード大学の研究は、こうした点を示した。ソーマスンダラムは、だからこそLatentは主に医療提供者、つまり患者の健康状態をより包括的に把握している医師、病院、薬局で利用され、最終申請を承認する「人間の介在」を組み込んでいるのだと語る。Latentは現在、保険者とは提携していない。
サンフランシスコ拠点の同社はすでに、ストックホルム拠点のTandem Health(評価額10億ドルで1億ドルの調達交渉中と報じられている)や、がんなどの疾患向け救命療法へのアクセス改善をうたいつつ、スペシャリティ医薬品の事前承認を加速するAIソフトウェアを開発するMandolinなど、一連の競合に直面している。この医薬品カテゴリは巨大市場であり、市場調査会社Global Market Insightsによれば、2024年に約2250億ドル、2034年には2兆3000億ドルへ拡大すると見込まれる。現在、米国の薬剤支出の50%を占めている。
マルチステージのVCファンドSpark Capitalのパートナーであるクレイ・フィッシャーは、それは複数のプレイヤーが参入する余地があることを意味すると考えている。さらにAIが医薬品開発と製造を加速させていることで、市場に出てくるスペシャリティ医薬品はさらに増えるだろう。「Latentが、支払者、医療提供者、製薬会社、そして患者の間を取り持ちながら、数千億ドル規模の支出の結節点に座ることができるのは、極めて戦略的だ」とフィッシャーは言う。
医療AIのユニコーン企業が相次いで登場し、診療メモの文字起こしや医療研究の精査といった作業で、医師の時間節約を支援している。ほかにも、ヤン・ルカンの注目株Advanced Machine Intelligenceのように、最先端のワールドモデルを医療分野の実世界タスクへ適用しようとする企業もある。
将来的にLatentは、患者へ直接サービスを提供することも視野に入れている。ソーマスンダラムによれば、同社のエージェントが服薬リマインドを行い、カルテを分析して、新たな治療を開始すべきタイミングを特定できるようになる可能性があるという。
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