AI

2026.03.30 00:05

AI時代、ソフトウェアサービス企業が競争優位の「堀」を築く方法

ナレシュ・プラジャパティ——CEO/創業者、Azilen Technologies。米カリフォルニア州サンフランシスコ。

Anthropicが新製品を1つ発表しただけで、世界のIT株式指数から数十億ドルが消し飛んだ。何十年ものあいだ、ソフトウェア開発はビジネスリーダーにとって魔法のようなものだった。だがいま、AIがその幕を引き剝がした。

私の経験では、ソフトウェア業界で大きな破壊的変化が起きるたびに、ITリーダーの心理は似たパターンをたどる。

ステージ1:否認——「AIには複雑な仕事はできない」

ステージ2:取引——「AIはツールとして使う」

ステージ3:パニック——株価暴落、人員削減

ステージ4:抑うつ——「我々はもう時代遅れだ!」

ステージ5:本稿で掘り下げるのは、この進化である。

私の見立てでは、ソフトウェアサービスのエコシステムの大半は、いまステージ3とステージ4の間のどこかにいる。

この段階で最大の変数はテクノロジーではないと私は強く信じている。人間の反応である。多くの企業がステージ3や4の周辺で足踏みする一方で、少数の企業はステージ5に踏み込み、自らを再設計する。

AIに訪れた「無限の猿」モーメント

古い格言に、猿をタイプライターの前に座らせ、永遠にキーを叩かせれば、いずれシェイクスピアの全集を打ち出すだろう、というものがある。

ひとまずAIを、その猿だと考えてみよう。十分なトークン、リトライ、反復を使えば、最終的には動くものを生み出す可能性が高い。AIがそれをできるのは、人間のように問題を「理解」しているからではない。人間が同じことをするよりも、はるかに速く、はるかに低コストで、試しては失敗し、また試すことができるからだ。

何年も、いや何十年ものあいだ、工数こそが商品であり、時間が通貨であり、人員数が成長戦略だった。だがコードが安くなったいま、価値は別の場所へ移っている。その別の場所とは、適切な問題、適切なアーキテクチャ、適切なトレードオフを定義することだ。

要するに、その猿はシェイクスピアの代わりになっているのではない。シェイクスピアが間違いを犯すコストを揺さぶっているにすぎない。思考の深さという点では、シェイクスピアがいまなお王冠を戴いている。

工数ベースのソフトウェア開発が終焉を迎える理由

1800年代、ろうそく職人は、自分たちは蝋(ろう)のビジネスにいるのだという強い確信を持っていた。だから蝋の香りや品質といった要素で競争していた。

そこに電気が登場した。

エジソンは、より良いろうそくを作ったのではない。ろうそくを時代遅れにしたのだ。人々が光を必要としなくなったわけではない。ただ、ろうそくを買って光を得る必要がなくなったのである。言い換えれば、光への需要は消えなかったが、ろうそくへの需要は消えた。仕組みが完全に変わったのだ。この瞬間、ろうそく職人は自分たちが蝋のビジネスではなく照明のビジネスにいるのだと気づいた。しかし、多くにとっては手遅れだった。

同じように、多くのソフトウェア企業はいまだに自分たちはコーディングのビジネスにいると信じ続けている。だがクライアントはコードを望んでいたことなどない。クライアントが求めているのは、エンジニアリングの卓越性を通じて届けられるスピード、効率、成長、安定性、そして明確さである。

だからAIは、より良いろうそくではない。部屋に入り込んできた新しい形の電気である。これこそが、クライアントが「工数」を買うことから「成果」を買うことへ移行している理由だ。

ただし、レガシーシステムが一夜にして消えるわけではない。企業の変革は四半期ではなく年単位で測られる。規制産業は慎重に動く。複雑なアーキテクチャには、丁寧なモダナイゼーションが必要だ。

AIが(まだ)コモディティ化できないもの

AI以前と以後の業界経験を通して、私は1つの変わらぬ真実に気づいた。企業が苦しんでいるのは答えがないからではない。問いの立て方が悪いこと、優先順位が不明確なこと、そしてシステム同士が連携していないことに苦しんでいるのだ。答えが無料になるAI主導のソフトウェア世界では、正しい問いを立てる企業の能力が、かけがえのない価値を持つようになった。

次に、AIがコモディティ化できないのは「大聖堂を築く人々」だ。エンタープライズソフトウェアは機能だけの話ではない。信頼性、セキュリティ、コンプライアンス、そして長期的な安定性の話である。信頼できるシステムは、プロンプトから生成できない。信頼には依然としてアーキテクトが必要だ。ツールを使うことやコードを書くことが本質ではなく、ビジネスにとって正しい目的地を見据え、システムをそこへ導くことこそが本質だと理解している優れたソフトウェアエンジニアリングチームは、AIに置き換えられにくい。

AIには、いまだ解決していない重要な問題もある。AIはボトルネックを別の場所へ移すという点だ。例えば、手作業でコードを書くことは2020年まではボトルネックだった。ところがAIによってコード生成はほぼ瞬時となり、ボトルネックはコードレビューとテストへ移った。今やAI駆動のレビューエージェントが登場し、ボトルネックはさらに移りつつある——運用(Ops)へ、そしてシステムの信頼性、安定性、保守性、セキュリティへと。

このことから私は強く信じる。ソフトウェアエンジニアリングを3次元空間にたとえるなら、AIはX軸とY軸を引き伸ばしている。だがZ軸——計画と実行の深さ——は、いまなおソフトウェアエンジニアに依存している。

新しいソフトウェア開発の世界で生き残る3つの種

産業革命の後、エコシステムは縮小したのではない。再編されたのだ。同様に、ソフトウェアサービスは消えるのではなく、別の種へと進化すると私は考えている。

・種1:増幅者(ジェットエンジンを搭載した鳥)

ジェットエンジンを装着した鳥のように、テクノロジーによって本来の能力を増幅させる企業である。AIを純粋な加速とインパクトの推進力として受け入れる。極めてリーンなチームで走り、従来コストの一部で成果を出し、攻めの価格で競争する。

・種2:統合者(ハイブリッド種)

この種は、AI、人間の専門性、構造化されたプロセスを融合させる。複雑でリスクの高い環境に注力し、単なるコーディングではなく、エンドツーエンドの変革を提供する。

・種3:検証者(ピアレビュアー)

説明責任のレイヤーで機能する存在である。セキュリティ、コンプライアンス、信頼性、安全性といったボトルネックを解消する。主な優位性は、高い信頼、強い規制適合、そして長期的な妥当性にある。

結論:コーディングの速さよりエンジニアリングの深さ

コーディングは商品ではなかった。エンジニアリングが商品なのだ。コーディングは表面を広げる。エンジニアリングは、実際のビジネス課題がある深部へ潜る。

非AI時代に蓄えたあらゆる知恵を集め、AIによって可能になったスピードと組み合わせ、意図的に適応していく時だ。先んじるのは、AIがソフトウェアサービスを殺すのではない、工数を売り続けて成果を売らない企業を罰するのだ、という単純な真実を認識するITリーダーだと私は信じている。

シェイクスピアがかつて書いたように、「疑いは裏切り者であり、試みることを恐れるがゆえに、勝ち取れたはずの善を失わせる」。だからこそ、大胆に試みよう。コーディングをエンジニアリングへ置き換えるのだ。「hello world」を「solve the world」に置き換えよう。

forbes.com 原文

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