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2026.03.29 18:41

AI時代の到来:過去のデジタル革命とは決定的に違う理由

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アンディ・シャクテルは、Sourcefitの創業者兼CEOである。同社は新興国で数千人のデジタルワーカーを雇用するグローバルBPO企業だ。

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マイケル・ジョーダンが新人王に輝き、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が興行収入トップだった1985年、米国でパーソナルコンピュータ(PC)を所有していた世帯は10%に満たなかった

当時の私は大学生で、象徴的な「ゴルフボール」型のヘッドを備えたIBM Selectricでレポートを打っていた。機械的な独創性によってタイプライター業界そのものを変えた機械である。翌年、RAM 512KBのMacintosh 512Keを購入した。下書きを保存し、きれいに推敲し、見栄えのする印刷物を出力できるようになった。あの飛躍は胸が躍った。革命的に感じた。

しかし、存在を揺さぶられる感覚ではなかった。その後40年の間に、私は3つの大きなデジタルの波――PC、インターネット、モバイル――を経験した。いずれも人間の能力を拡張し、巨大な富を生み出した。いずれも、権力を集中させたうえで、その一部を拡散させた(ただし不均等ではあった)。そしていずれも文化的な不安を引き起こしたが、振り返れば誇張されていた部分と、正当だった部分があった。

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人工知能(AI)は私にとって違って見える。単に速い、賢いからではない。技術変化の構造そのものを変えてしまうからだ。ビジネスリーダーにとって、その影響は喫緊の課題だと私は考える。過去20年にわたり築かれてきた労働力戦略、ガバナンスの前提、競争優位が、足元から組み替えられつつあるからである。

3つの波、1つのパターン

PCは、経済力を物理的な生産から切り離した。インターネットは、出版と商取引を分散化した。モバイルは世界的なアクセスを拡張した。10年ほどで数十億人が接続性を得て、M-Pesaのようなサービスが、銀行口座を持たなかった人々の金融参加を可能にした。そうした変化の中でも、ひとつのパターンは維持されてきた。ツールは人間の到達範囲を増幅した。普及は目に見えた。恩恵は不均等だったが、時間とともに概して人々を力づけた。AIはそのパターンを破ったと私は考える。

見えない、中央集権的、そして説明責任がない

PCやウェブサイト、スマートフォンとは異なり、AIシステムは、多くの人がそれとやり取りしていると気づくはるか以前から、プラットフォームの内部に静かに埋め込まれていた。購入の意思決定も、オンボーディングの瞬間も、公的な議論もなかった。レコメンドシステム、ランキングアルゴリズム、エンゲージメントモデルが、何十億人もの人々が何を見て消費するかを形づくった。これはエンゲージメント、クリック、コンバージョンの最適化に向けられていたが、必ずしもウェルビーイングや社会的結束のためではなかった。その影響は世界規模で拡大した一方で、仕組みは不透明なままだった。しばしば、それを展開する企業自身にとってさえそうだった。

20年前、不平等の主因はアクセスの欠如だった。いま私が目にするのは、別の不均衡である。過度な曝露だ。We Are Socialの年次デジタルレポートによれば、フィリピンの平均的な利用者はソーシャルメディアに1日あたり3時間超を費やしている。彼らが何を見るかを決めるアルゴリズムはどこにあるのか。誰がそれをコントロールし、何のためにそうするのか。最も影響を受ける人々には、いずれに対しても発言権がない。将来、彼らにそれが与えられることはあるのだろうか。

同時に、AIの背後にあるインフラは急速に集中している。高度なモデルの学習には、途方もない計算資源、専有データ、資本が必要だ。専門的なAIデータセンターを擁する国は、約198カ国中わずか32カ国にとどまり、その大半を米国と中国が支配している。インターネットは情報を分散させた。だがAIは、その情報がどう解釈され、優先順位づけされ、行動に移されるかをますます統治し、経済力を集約している。

能力が適応を上回るスピードで進化している

これまでのデジタルの波は、目に見える、予測可能な軌道に沿って改善していった。AIの能力は質的に前進し、その速度に制度の適応が追いつかないことが多い。動く標的に合わせて調整している状況だ。

政府が規制を議論する一方で、企業は急速に進化するシステムを展開し、地政学的競争が、開発を制約するどころか加速させている。持続的な規範が確立されないうちに、システムは採用、金融、医療、情報のエコシステムへと入り込んでいく。

こうした力学は、テック革命というより戦略的な軍拡に近い感覚がある。最先端の学習の単発実行(トレーニング・ラン)には、いまや10億ドル近い費用がかかる。地政学上のライバルは互いに先んじようと競い、これを拘束する国際的な枠組みは存在しない。

私は、このテーブルに席を持たない5カ国で事業を行っている。前回のデジタルの波によって経済が築かれた国々の多くも同様だ。AIのルールが、それを作る国だけによって書かれるなら、世界の残りは単に遅れをとるだけではない。自らが形づくることに関与しなかったシステムによって統治されることになる。

変曲点

過去40年が示すのは、テクノロジーが自動的に不平等を縮小するわけではないということだ。機会を一部の人に広げる一方で、そのインフラを支配する者に優位を集中させる。

単に採用するだけでなく、技術を理解することに投資した企業が、うまく進化してきた。いまも同じである。ただし、残された時間は短いように見える。

デジタル経済は、アウトソーシングとオンラインサービスを通じて、インド、フィリピン、南アフリカなどで何百万人もの人々を、より安定した生計へと押し上げた。AIはいま、その進歩を可能にした認知的タスクの一部を取り込む恐れがあると私は考える。私は、前回の波によって経済的な軌道が開かれた数千人を雇用している。彼らとAIについて話すと、熱意はある。しかし、これまでの進歩では見られなかった形で、将来を心配してもいる。

私たちの前にある選択

これらは、AIが本質的に有害だという意味ではない。科学的発見から生産性の加速に至るまで、その潜在力は並外れている。しかし歴史が示すのは、市場原理だけでは公正な結果は生まれないということだ。集中は初期に起こる。拡散は、起こるとしても後になり、不均等に進む。

AIは、認知そのものを再編する最初のテクノロジーになるかもしれない。ゆえに、その先に起こることは、過去のどの技術転換よりも重大になり得る。だが不透明な性質、そしておそらく経済・地政学的な利害の大きさゆえに、一般の人々はひどく情報不足のまま、力を持てない状態に置かれ続ける可能性がある。

ビジネスリーダーは、経営層に限らず組織全体でAIリテラシーに投資することから始められる。依存するAIベンダーに透明性を求めることもできる。そして、代替による影響に最もさらされる労働者を、「許容できる損失」として扱うのではなく、移行計画に組み込むことを徹底できる。

AIが繁栄を広げるのか、それとも集中を加速させるのかは、モデルが何をできるかよりも、リーダーがいま下す選択、そしてその選択の影響を最も受ける人々が、その決定に声を持てるかどうかにかかっている。

forbes.com 原文

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