ロシア国内の厳しい経済状況
ロシアの軍事情勢は悲観的だが、経済状況も深刻だ。国際通貨基金(IMF)は1月、同国の今年の国内総生産(GDP)成長率を、昨年と同様の水準となる0.8%と予測した。同国では現在、国家予算の約40%が軍事・治安機関に費やされており、戦時体制は民間部門の支出を圧迫し、労働力不足を招くとともに、約15%という高金利をもたらしている。
ロシアでは、都市部と農村部との経済格差の拡大も深刻な問題となっており、昨年は国内の地域の3分の2近くが財政赤字に陥った。もしロシアがウクライナに侵攻していなければ、現在のロシア経済は20%以上拡大していたとする推計もある。
長期的な経済見通しも暗い。西側の制裁により、ロシアが不可欠な技術や工業用部品を入手できる機会は大幅に制限されている。たとえ入手できたとしても、同国は国際相場より法外に高い金額を支払わざるを得なくなっている。
広く報じられているように、ウクライナ侵攻によって国際企業がロシアから撤退し、同国出身の技術者も海外に流出している。これがロシア経済に与えている長期的な悪影響の一例として、同国では人工知能(AI)分野の優秀な人材が大量に流出しているほか、最先端のAIチップの入手手段が断たれ、重要な研究に対する国際投資やベンチャーキャピタルも枯渇している。実際、ある報告書によると、2024年にロシアのAI企業は開業資金として約3000万ドル(約48億円)を調達したのに対し、米オープンAIは同期間に60億ドル(約9600億円)以上を調達した。
米スタンフォード大学の「世界AI活力指数」によると、ロシアは昨年、36カ国中28位だった。つまり、ロシア経済は現在苦境に陥っているだけでなく、プーチン大統領は長期的な苦難の土台を築いているのだ。
中東情勢の混乱がプーチン大統領を救う
こうした絶望的な状況の中、中東情勢の混乱がプーチン大統領に当面の救いの手を差し伸べている。米国がイランへの軍事作戦を開始してから4週間以上が経過した今、この紛争の初期段階における勝者がロシアであることは明らかだ。
ホルムズ海峡経由の石油の流れが途絶えたことに伴う原油価格の高騰で、ロシアは既に多額の利益を得ている。一部のアナリストは、ロシアは1日当たり最大1億5000万ドル(約240億円)の追加収入を得ており、中東の混乱が今月末まで続けば、総額で30億~50億ドル(約4800億~8000億円)に達すると推計している。


