サヒル・ガンジー(ブランド戦略家)。ロンドン拠点のWebflowエージェンシーBlushushおよびパーソナルブランディングエージェンシーOhh My Brandの共同創業者。
アルベルト・アインシュタインは、6歳の子どもに説明できないなら、自分自身もそれを理解していないのだと語った。
もちろん、彼がそう言ったのは科学の文脈においてだが、これは人生のあらゆる場面に当てはまると私は感じている。個人的にも、仕事でも、とりわけブランディングの世界ではそうだ。人生の多くはシンプルで、ブランドも同じである。多くの創業者や起業家に欠けているのは、プロダクトを忘れられないものにするためにブランディングへ組み込むべき「明確さ」だ。
ここはあなたに直接話したい。もし自分のブランドをシンプルな1文で説明できずに苦しんでいるなら、あなたのプロダクトは市場で厳しい状況に陥るリスクがある。同じ境遇にいるのはあなただけではないが、正しい一歩を踏み出す必要があることは確かだ。
あなたのブランドが1文で説明できない本当の理由
明確さが足りないからだ。
縁日でおもちゃを売っているなら、ターゲットは親ではなく子どもである。子どもは親の手を引いて店に連れて行き、意地を張り、子どもらしく、少し大げさに騒いで、親におもちゃを買わせる。これは、人々が「何かをつくる」ことに十分な焦点や思考を注いでいない例の1つにすぎない。
多くの創業者は、プロダクトをつくったりサービスを提供したりするとき、それを特定のターゲット層の一部と直接結び付けて考える。しかし賢く考えるなら、プロダクトを規定するのはオーディエンスであり、その逆ではない。
ブランディングという名目で自分の周りに積み上げたナンセンスはすべて手放そう。シンプルに、明確に保つことだ。これはチャーリー・マンガーの別の言葉を思い出させる。「シンプルなアイデアを真剣に扱え」。
それだけでいい。明確さがあれば、やるべきことはそれだけだ。次の1文ならしっくりくるはずだと期待して、エレベーターピッチやLinkedInの自己紹介、ウェブサイトのヘッダーを何度も書き直すのはやめよう。ほとんどの場合、うまくいかない。
「1文で語れる」という神話を手放す
まず自問してほしい。なぜあなたにとって、ブランドを1文で定義することがそこまで不可欠なのか。あなたはレースや競争の渦中にいるわけではない。この茶番は丸ごと捨てよう。ブランドを1文で定義したいという発想は、遅れを取るのではないかという不安から来ているのかもしれない。
この強迫観念のなかで、私は「整合」を取るための骨の折れる作業を飛ばし、いきなり「言語化」に飛びつく創業者を何人も見てきた。そうして生まれるのは、洗練されて聞こえる一方で、価値がまったくない文章だ。
起業家は、ビジネスは利益を得るために行うのではないということを忘れがちだ。ビジネスを行う唯一の理由は、何かをつくり、価値を加えることにある。あなたのプロダクトがそれをできないなら、まずそれをブランドと呼ぶのをやめ、基本に目を向けよう。ブランドのすべてを1文に詰め込もうとすると、あなたはそれにラベルを貼っているだけになる。この発想は捨てるべきだ。求めている見返りは得られない。
本当の問題は、トレードオフを決めていないこと
ブランドが説明できるようになるのは、選択がなされた後である。誰に向けるのか。どんな問題を選ぶのか。どんな視点を取るのか。どこまでを境界とするのか。
多くのブランドはトレードオフを避ける。トレードオフは「制限」に感じられるからだ。だからブランドを「オープン」に、「柔軟」に、「進化中」にしておく。そうして何も伝わらない理由が分からなくなる。
あまりにも多くの人に、あまりにも多くのことをしようとすると、ブランドは複雑になる。そこから導かれる結論は1つ。「明確さとは、引き算である」。
説明が出発点だと思っているなら、それは間違いかもしれない
率直で厳しい真実を言おう。最高のブランド文章は、最後に書かれる。
それはポジショニングの前ではなく、後に生まれる。紙の上では立派に見える願望ではなく、すでに下された意思決定を反映する。
だから優れたブランドほど、自分たちの説明に執着しない。一貫して行動することで、説明が不要になるからだ。文章は、すでに明白になっていることに言葉を与えるにすぎない。
問いを変える
「なぜ自分のブランドを1文で説明できないのか?」と問うのではなく、「自分はどんな決断を避けてきたのか?」と問うことだ。
その決断がなされれば、この問いがあなたのために文章を書いてくれる。
スローガンとしてではなく、シグナルとして。そしてそれこそが、ブランドが果たすべき役割である。



