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2026.03.30 14:00

「人の脳をAIの設計図に」暗号資産億万長者が1600億円を投じる挑戦

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エメリービルにある2階建てのレンガ造りのオフィスビルでは、神経科学者たちが、迷路を進むといった基本的な課題をこなすマウスの神経活動パターンを記録するため、小型のブレインコンピューターインターフェース(BCI)を装着させる計画を進めている。研究者たちは、特定の知覚や行動に確実に対応づけられるマウスの脳状態のライブラリを構築したい考えだ。

次に控えるのは「トランスレーション(翻訳)」である。つまり、そうした発見をコードへと落とし込み、最終的には脳の統治原理に基づく新種のAIシステムへとつなげることだ。実験はマウスに加え、サル、さらには人間でも実施する計画である。

うまくいけば、これはフライホイール(好循環)になり得る。脳実験が新たなAIアーキテクチャに着想を与え、そのアーキテクチャが検証すべき新仮説を示唆する。全体を覆うのは、SFじみた野心だ。ブレインコンピューターインターフェースを、心を「読む」ためだけでなく「書き込む」ためにも使うことである。研究者たちは、知識を脳に「アップロード」すること、誰かの思考にリンゴのイメージを挿入すること、あるいは見たことのない迷路を進むための道順を入れることを語る。

ウィリアム・ギブスンの小説からそのまま引き抜いたような話だ。暗号資産プロジェクトのRippleとStellarを立ち上げたジェド・マケーレブは、これを現実にするため資金を投じようとしている。

このシリコンバレーの億万長者は、自身の暗号資産の富から10億ドル(約1600億円)を拠出する。フォーブス推計で約39億ドル(約6250億円)に上る資産だ。目的は、汎用人工知能(AGI)、すなわちAIシステムが人間と同等にタスクをこなせるようになる閾値を達成するAIシステムの構築である。

「大半の努力と研究が……特定の領域、つまりトランスフォーマーに注ぎ込まれている」とマケーレブは言う。「(AIは)人間の脳をもっと注意深く見ることで恩恵を受けるはずだ」

この取り組みへの資金は、マケーレブが運営する非営利団体Astera Instituteを通じて提供される。同研究所は以前からAIに焦点を当ててきたが、最近、脳に着想を得たアプローチへと的を絞り、それがマケーレブの大きなコミットメントを促した。こうしてAsteraは、明確な商業化計画がないまま数十億ドル)規模の資金が投じられているAI研究ベンチャー群に加わる。そこには、OpenAI共同創業者のイリヤ・サツケバーによるSSIや、ジェフ・ベゾスのProject Prometheusなどが含まれる。

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