数十年もの間、一度も充電や電池交換をすることなく、遠く離れた宇宙から信号を送り続ける探査機がある。1977年に打ち上げられたボイジャー1号だ 。2026年3月現在、地球から約247億キロメートルという光の速さで約1日かかる距離に到達しながら、今なおデータ送信を継続できているのは、その心臓部に「原子力電池(ラジオアイソトープ電池)」を搭載しているからに他ならない。
原子力電池とは、放射性同位体(ラジオアイソトープ)が自発的に崩壊する際に放出するエネルギーを電力に変換する、小型の独立電源デバイスである。原子炉を用いた原子力発電が、ウランなどの核燃料による「核分裂の連鎖反応」で生じる膨大な熱を利用するのに対し、原子力電池は連鎖反応を伴わず、あくまで物質が自然に崩壊していくエネルギーを活用するため、その仕組みは根本的に異なる。
リチウムイオン電池のような化学電池は、電極間の化学反応でエネルギーを蓄えるため定期的な充電が欠かせないが、原子力電池は放射性同位体の半減期に応じ、数年から数十年にわたって安定した電力を供給し続けることが可能だ。
アスタミューゼの調査レポートによれば、この原子力電池が今、新たな技術革新によって再び脚光を浴びている。2010年代以降、放射線耐性に優れたダイヤモンド半導体などのワイドバンドギャップ半導体や、設計自由度の高いペロブスカイト半導体の登場により、電池の大幅な小型化と高効率化が加速しているのだ。
特許出願の動向を分析すると、現在、出願件数で世界をリードしているのは中国だ。国家プロジェクトとして有人宇宙飛行や月探査を強力に推進する中国は、孤立環境における高出力電源として原子力電池の研究開発に注力しており、長期的な増加傾向を維持している。



