数週間ごとにあなたのフィードをにぎわせる、AIに関する新たな言説。
ある見出しは、これから1年半であなたの業界全体がAIに取って代わられると報じ、別の見出しは、AIを先に使いこなす者が巨万の富を手にすると断言する。その下に続くのは、懐疑論者が信奉者を嘲笑し、信奉者が懐疑論者を嘲笑するコメントの数々だ。そしてその中間で、あなたは現実の判断を迫られる。
ここのところAIをめぐる世間の言説は、ほぼ事実に基づかないものになってきている。「正確であること」よりも「正しいと思いたいこと」を優先する2つの強い感情が論調を支配しているからだ。
特に混乱させるのは、両陣営がしばしば同じ研究を引用している点だ。たとえばマッキンゼーのレポートは、懐疑論者には「仕事の消滅が避けられない論拠」として引用され、楽観論者には「AIによる変革が新たな機会を生み出す論拠」として引用されている。その背景にあるのは、未だ解釈がわかれている曖昧な現状だ。そして曖昧さに不安を感じる私たちは、「正しいと思いたい」方の言説をむやみに支持する。
「AIの得意分野」を理解する
しかし研究を注意深く読むと、こうした言説よりもはるかに有益な情報が見えてくる。ハーバード大学とボストン・コンサルティング・グループが758人のコンサルタントを対象に行った調査では、AIが作業速度を約25%、品質を40%以上向上させ、パフォーマンスを大幅に改善したことが明らかになった。しかし、それは研究者が「ギザギザした技術的境界線(jagged technological frontier)」と呼ぶ範囲内のタスクに限られる。その範囲外のタスクでは、AIはむしろパフォーマンスを低下させた。
さらに同調査では、注目すべき点がもうひとつ明らかになった。それは、AIは優秀なトップコンサルタントよりも、成績がふるわないコンサルタントのパフォーマンスをより大きく向上させたという事実だ。AIというツールはどうやら、必要としている人にこそ最も役立つらしい。たとえば新入社員など実力がまだ不足している人にとっては、AIの意識的かつ継続的な活用が重要になる。



