米の移民・税関執行局(ICE)および税関・国境警備局(CBP)の捜査官は、移民関連施設の周辺や住宅地で群衆統制のために催涙ガスなどの化学刺激剤を頻繁に使用していることをめぐり、オレゴン州ポートランドやミネソタ州ミネアポリスで、世論および議会による厳しい監視、訴訟、連邦裁判所命令に直面している。コロラド州デンバーが次に続く可能性を示す兆候も強まっている。こうした事案は広範に報道されているにもかかわらず、催涙ガスの健康影響について知る人は多くない。
詳しく知るため、筆者は米国医療毒性学会(American College of Medical Toxicology)の群衆統制用化学物質による化学的・外傷性損傷についてのオンライン講座を最近共著した専門家に話を聞いた。
スークシャン(スーキー)・アティ医師(M.D., M.P.H.)は、アラバマ大学バーミングハム校(UAB)の救急医学助教であり、医療毒性学の専門医である。ニュージャージー州ニューアークのベス・イスラエル・メディカル・センターで救急医学のレジデンシーを修了後、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターで災害医療、エモリー大学で医療毒性学のフェローシップを修了した。2020年にUABに加わって以来、アラバマ州毒物情報センターの副医療ディレクター、ならびに同大学の救急医学レジデンシー・プログラムの中核教員を務めている。
──「催涙ガス」とは何で、どのように作用するのか。
スーキー・アティ医師:「催涙ガス」には、いくつかの包括的な呼称があり、互換的に用いられている。刺激剤、暴動鎮圧剤、メース、ペッパースプレー、非致死性薬剤などである。これらの化学物質が目や喉、上気道、露出した皮膚に接触すると、強い刺激が生じる。
なお、これらを「ガス」と呼ぶのは誤りである点に触れておきたい。実際には固体であり、溶媒に溶かしたうえで、圧縮窒素などの噴射剤で散布される。また、発煙剤と混ぜることもでき、その場合は目に見える霧や煙になる。
──直後および短期的にはどのような影響が出るのか。
アティ医師:体の湿った部位では、これらの化学物質が神経細胞を活性化し、まぶたのけいれん、過剰な涙、鼻水、くしゃみ、咳、喘鳴、あるいは息が詰まる感じや嘔吐反射のような感覚を引き起こす。曝露がより重度の場合、目や皮膚、粘膜の化学熱傷や、肺水腫(肺に急速に液体がたまる状態)を生じうる。
──曝露した場合、目の不快感やほかの症状を軽減するために何ができるのか。
アティ医師:最善策は、他人を踏みつけないよう注意しながら、できるだけ早くその場を離れることだ。これらの化学物質は衣類や身の回り品に付着するため、曝露を最小限に抑えるべく、両方をできるだけ速やかに取り除く必要がある。
目や粘膜をさらに刺激しないためにも、シャツを頭から引き抜かないようにしたい。コンタクトレンズはすみやかに外し、その後、冷たい水を十分に使って10〜15分、または症状が治まるまで目を洗い流す。刺激を受けた皮膚は、できるだけ早く石けんと水で洗うこと。強い窒息感や息切れなど、より懸念される症状がある場合は、直ちに救急医療を受けるべきである。



