3月24日、Appleは「Apple Business」を発表した。4月14日から、日本を含む200以上の国と地域で提供が始まる。
一見すると、法人向けサービスを整理し直しただけに見える。だが実際には、Appleの法人戦略にとって小さくない転換点だ。これまで分かれていた管理機能をまとめただけでなく、企業のIT基盤と顧客接点の両方に入り込む入口を作ったからだ。
バラバラだった3つを1つの顔に
Appleの法人向けサービスは、これまで3つに分かれていた。デバイスの登録・配布基盤である「Apple Business Manager」、MDM(Mobile Device Management、モバイルデバイス管理)やAppleCare+をまとめた中小企業向けサブスクリプション「Apple Business Essentials」(米国限定・有料)、そしてAppleの純正「マップ」上の店舗・ブランド情報を管理する「Apple Business Connect」だ。
IT管理者でもなければ、この3つの名前すら聞いたことがないだろう。それも無理はない。IT管理、運用サービス、ブランド管理という別々の機能が、別々のダッシュボードに散らばっていた。同じ「Apple Business」の名を冠しながら、使う人も部署も違う。この分断自体が、Appleの法人向けサービスが認知されなかった理由のひとつだった。
今回のApple Businessは、これらを単一のダッシュボードに束ねた。そして統合以上に大きいのは、米国限定で有料だったMDMがグローバルで無料化され、自社ドメインのビジネスメールとカレンダーまで加わったことだ。
Appleは「企業が仕事を始めるときに最初に必要になるもの」に、いよいよ踏み込んできた。
小さな組織ほど即効性あり
無料プランの中身を並べると印象が変わる。MDM、ゼロタッチ導入用の「ブループリント」、自社ドメインのメールとカレンダー(500メールボックスまで)、従業員1人あたり5GBのiCloudストレージ。
新しい組織を立ち上げるとき、ドメインを取ってGoogle WorkspaceかMicrosoft 365を契約するのが定番だった。数人のチームでも毎月の課金が発生する。Apple Businessは、その常識の一部を崩しにきた。少なくともメール、カレンダー、デバイス管理という基盤部分は、追加コストなしで始められる。
メールはIMAP、カレンダーはCalDAV対応なので、WindowsやAndroidからでも使える。Apple製品だけに閉じた仕組みではない。Appleにしては珍しいほどオープンな設計だ。
円安でAppleハードウェアの価格が上がり続けている日本では、ソフトウェア側のコストを圧縮してデバイス調達に回す「コストシフト」が現実味を帯びる。Appleにとっても、これは単なる値引きではない。ハードウェアの高さでためらわれていた導入を、ソフト側から後押しする仕掛けとして機能する。



