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2026.03.31 11:30

AIにより「若手が実務経験を積む機会」激減、企業はどう対応すべきか

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実務経験を積まずに専門知識を身に着けるには

弁護士が判例を熟知したり、エンジニアがゼロからコードを書いたり、マーケターが手作業で広告キャンペーンを企画したりする必要が減るというのなら、専門性を深めていく上では、もう実務経験を一歩一歩積むことだけに頼ってはいられない。専門知識を深めるためには、仕事のプロセスに関与し、どこで破綻するのかを理解し、異議を唱えるべきタイミングを知る必要がある。

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マイクロソフトが2025年12月に発表した報告書「2025 Future of Work Report」では、AIを介した仕事で求められる3つの専門知識が明確に区別されている。「領域の専門知識」「AIを使いこなすための専門知識」「AIシステムを管理するための専門知識」の3つだ。報告書によれば、この3つの専門知識を切り離さず、相互に作用させることで、真の効力が生まれるのだという。

同報告書は、専門知識を持つ人に見られる行動パターンを浮き彫りにしている。経験豊富な従業員は、AIにすべてを丸投げするようなことはしない。単純作業は取捨選択した上でAIに任せつつ、解釈や統合、意思決定といった高度な作業は意識して自ら行うようにしている。専門知識の維持とさらなる蓄積に努め、AIへの依存を絶えず微調整しなくてはならないことを理解しているわけだ。そうした微調整は、システムがどのような前提に立っているのか、どのような過程を経てそのアウトプットに至ったのか、その推論にはどういったトレードオフが組み込まれているのかを把握できている時に初めて可能になる。

言い換えれば、専門知識は、実践だけでなく、対話や比較、軌道修正を通じて養われていくということだ。

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AIシステムが、洗練された最終回答だけを出力するブラックボックスとして設計されていれば、短い目で見れば生産性は向上しても、長い目で見れば専門性が失われてしまう恐れがある。なぜなら、人々はそのシステムの回答を疑う判断力を培う機会なく、ただ使うだけになってしまうからだ。こうした状況における意思決定が、専門知識の今後の培われ方を形作っていくことになる。

AIが存在する世界で、領域の専門性を養うためには、絶えず人間に判断を強いるようなシステムとワークフローを設計しなくてはならない。それには、AIと意見が相違する余地を持たせたり、重要な局面では人間による検証を必要としたりすることも含まれる。また、AIシステムの提案と、人間の判断を照らし合わせて、生じ得る結果を確認できるフィードバックループを作り出すことも必要だ。

これが、新たな「新人の労働」の形だ。

専門性は、もはや実務をこなすことでは培えない。いかに問いかけ、いかに解釈し、いかに異議を唱えるのか、マシンを信頼できるのはいつ、なぜなのかを知ることで培うものだ。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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