ロンドン・ビジネス・スクール 戦略・起業論(アデコ)教授 イサベル・フェルナンデス=マテオ
生成AIと仕事をめぐる初期の議論が「どの仕事が消えるのか」に焦点を当てていたとすれば、次の段階で焦点となるのは、より差し迫った問題である。すなわち、そもそも組織が「誰を採用するのか」をどう決めるのかだ。
生成AIは、採用プロセスに急速に入り込みつつある。雇用主は、職務記述書の作成、候補者の特定、面接の分析、応募書類の評価を行うツールを試している。同時に、応募者側も同じ技術を用いて、カバーレターを書き、履歴書を最適化し、面接に備えている。
この相互の導入は、見落とされがちな形で採用を変貌させている。最も重要な変化のいくつかは、採用担当者が意思決定を下すより前、組織が職務を定義し、候補者を惹きつけ、応募者集団を形成する段階で起きる可能性がある。
この変化を理解することが重要なのは、採用プロセスが欠員を埋める以上の役割を担っているからである。採用は、誰が機会へアクセスできるのか、そして人材が労働市場をどう流れていくのかを左右する。
AIはすでに「職務の定義」を形づくっている
採用の最初の段階は、応募書類が届くよりはるか前から始まっている。組織が「実際に何のために採用するのか」を決めるときだ。
従来、マネジャーは事業ニーズを、責任範囲、資格、スキルを定義することで職務記述書へと落とし込んできた。ところが近年、この工程を支援するために生成AIツールが用いられるケースが増えている。
こうしたシステムは、何千もの既存の求人票や労働市場データセットを分析し、新たに生まれつつある職種の記述を生成したり、特定のポジションに紐づく能力要件を提案したりできる。
表面的には生産性向上に見える。だが重要な問いも生じる。AIシステムが過去の職務記述書から学習するなら、これまでの採用判断を形づくってきた前提を再生産してしまう可能性がある。
時間が経つにつれ、そうしたパターンは自己強化的になり得る。生成AIは候補者をふるいにかけるだけでなく、組織が職務そのものをどう概念化するかにも影響を及ぼすかもしれない。
採用広報はよりパーソナライズされ、より見えにくくなる
次の変化は、組織が候補者を惹きつけようとする局面で起きる。
採用活動は長らく、求人サイト、社員紹介、人材紹介会社、直接のアプローチといった複数のチャネルの組み合わせに依存してきた。生成AIツールは今、このプロセスの一部を自動化し、パーソナライズすることを可能にしている。
例えば、組織は異なる対象層に合わせた求人広告の複数バージョンを生成したり、プロフェッショナル向けプラットフォーム上で潜在候補者を自動的に特定し、個別最適化したスカウト文面を送ったりできる。
理屈の上では、こうしたツールは、これまで当該ポジションに出会えなかった人々へもリーチすることで、機会へのアクセスを広げ得る。だが一方で、アルゴリズムが既存社員や過去の採用者に似た個人を優先的に狙い撃ちするなら、パイプラインを狭めてしまう可能性もある。
組織行動の研究は、採用メッセージのわずかな違いが「誰が応募するか」に影響することを一貫して示してきた。AIシステムがそうしたメッセージを大規模にパーソナライズするなら、検知しにくいが重大な形で応募者集団を作り替えるかもしれない。
選考はより速く、より混み合うものになっている
生成AIの最も目に見える影響は、候補者選考の場面に表れている。
組織は長年、アルゴリズムを用いて履歴書をスクリーニングしてきた。生成AIは対話型ツールを導入することで、これらの能力を拡張する。録画面接を分析したり、追加質問を生成したり、候補者の回答に基づいて個別最適化した評価を作成したりするシステムもある。
これらの技術は、採用プロセスを運用できる規模を拡大し得る。
しかし候補者側も、数多くの職に向けて個別最適化した応募書類を素早く作れる生成AIツールを採用し始めている。応募が容易になるほど、組織ははるかに大量の応募を受け取ることになり得る。
ここに逆説が生まれる。採用システムはより効率的になる一方で、候補者間の競争は激化する。その結果、より頻繁な不採用が起きるかもしれない。
研究は、繰り返される不採用が長期的な影響を及ぼし得ることを示唆している。候補者はそこから、採用プロセスの公正さや自分の成功可能性について推論するからだ。こうした影響は、特定の分野における女性のような過小代表の候補者で特に顕著になり得る。彼女らは、不採用を「機会が限られている」というシグナルとして解釈しやすい可能性がある。
応募書類の「標準化」リスク
もう1つの重要な問いは、生成AIの広範な利用に対し、雇用主と候補者がどのように適応していくかである。
組織は一般に、新技術を試し、採用システムへ統合するための資源をより多く持つ。これに対し候補者は、公開されているツールに依存する。
この不均衡は、雇用主側の期待によって形成された慣行へと採用手法が収れんしていくことにつながり得る。もし組織がAI最適化された履歴書や特定の応募フォーマットを期待し始めれば、候補者はその規範に従うことを余儀なくされるかもしれない。
皮肉なことに、これは採用システムをより標準化しつつ、雇用主が応募者の能力について受け取るシグナルの多様性を減らす可能性がある。
採用の未来にはなお人間の判断が必要だ
こうしたことは、生成AIが採用における人間の意思決定を置き換えることを意味しない。
AIは膨大な情報の処理や定型作業の自動化において卓越している。だが採用の意思決定には、潜在力、文脈、組織との適合といった評価が伴い、これらはデータだけで完全に捉えることがなお難しい要素である。
リーダーにとっての核心的な問いは、採用に生成AIを導入するか否かではない。どう責任ある形で活用するかである。そのためには、データソース、アルゴリズム上の前提、意図しない結果について新たな問いを立てる必要がある。
これらのツールは、そもそも誰が機会を目にするかをどう形づくるのか。誰が応募を継続するかにどう影響するのか。
採用における生成AIの可能性は現実のものだ。だが最も大きな影響は、リクルーターや採用担当者を置き換えることではなく、候補者と機会を結びつける、しばしば見えにくいメカニズムを、最終的な採用判断が下されるはるか前から作り替える点にあるのかもしれない。
本稿「Generative AI Is Changing Hiring. Its Most Overlooked Impact May Come Before Anyone Applies」は、Journal of Organization Design(2025)に掲載された最新研究に基づく:How generative AI is transforming hiring in organizations: key issues and research questions
イサベル・フェルナンデス=マテオはロンドン・ビジネス・スクールの戦略・起業論(アデコ)教授である。スペイン出身。マドリード・カルロス3世大学で学士号、バルセロナのポンペウ・ファブラ大学で修士号、MITで博士号を取得している。
彼女の研究は、関係性がキャリアの成果をどのように形づくるかを検討するもので、とりわけ採用、転職・移動、昇進、ならびに経営層労働市場におけるジェンダー多様性のダイナミクスに焦点を当てている。近年は、女性のリーダー職へのアクセスを制限する組織的・社会的障壁も探究している。
ロンドン・ビジネス・スクールではMBAおよびエグゼクティブMBAのコア科目として戦略マネジメントを教え、キャリア戦略とピープル・アナリティクスに関する選択科目も提供している。また、博士課程プログラムにも貢献している。研究成果はAdministrative Science Quarterly、American Sociological Review、American Journal of Sociology、Management Science、Organization Scienceなどの主要学術誌に掲載されている。現在、Management Scienceの「Organizations」セクションのデパートメント・エディターを務める。



