スマホのボット。チャットのボット。メールのボット。では、現実世界のAI人間はどうか。いままさに、それが起きている。
AI駆動のデジタルヒューマンを開発するUneeQを率いるダニー・トムセットは、実在の人間を置き換えようとしているのではない。彼が望んでいるのは、人間を拡張することだ。人間がそこにいられない場面で、AIが人間として機能すること。そして、これが価値を生み得ることを理解する組織は増えている。
UneeQのデジタルヒューマンは、生きているかのようなアバターであり、人間が対応できないときに従業員のトレーニングや顧客対応を支援するために設計されている。同社の中核的なサービスには、チームがアバターと実際の会話を練習し、企業内の状況をロールプレイすることで課題を洗い出し、発生し得る問題への対処を訓練できる没入型のトレーニングプラットフォームが含まれる。プラットフォームはその後、パフォーマンスに関するフィードバックと測定も提供する。
デジタルヒューマンOS
同社はまた、「デジタルヒューマンOS(オペレーティングシステム)」と呼ぶ仕組みも提供しており、アバターが顧客と対話してサービス上の問題解決を行えるようにしている。アバターは訓練済みで「ブランドセーフ」とされ、企業のアンバサダーとして、またイベントやキオスクにおける担当者として活用されている。
「適切なトレーニングを施せば、人間のようなアバターは、すでに業務過多になっている可能性のある組織に対して、定期的かつ一貫した水準のサービスを提供できる」と彼は語った。
そうした組織の1つがオーストラリア政府だ。リソース不足のなか、政府は障害を持つ訪問者が複雑なオンラインサービスを利用できるよう支援する訓練された人材を必要としていた。
「これこそが、私たちの創業の原点だ」と彼は言う。「政府のコールセンターは過負荷で、例えば玄関先まで食料を届けてもらうための手続きを進めるだけでも、支援を求める人の平均待ち時間が2時間ほどになっていた。そこで私たちは、人々がそうしたシステムを使いこなせるよう支援するデジタルヒューマンAIを構築した」
顧客体験を向上させるデジタルヒューマン
しかし、話はそれだけではない。トムセットによれば、AIアバターは、どのような組織にとっても顧客体験と売上の双方を大幅に改善する助けになり得るという。
「企業はデジタルヒューマンを使って、顧客の意思決定を支援している。特に購入が複雑な場合だ」と彼は述べた。「不確実性に対処し、ユーザーを導くことで、アバターはコンバージョンを高められる。デジタルヒューマンはこれを、友好的で、判断を下さないやり方で、一貫して実行できる」
正直に言えば、私はAIボットと話すのが好きではない。音声や動画のなりすましであれ、だ。私はホテルのフロントや航空会社のサポートに電話すると、すぐにオペレーターのボタンを連打して人間につないでもらうタイプである。その一因は世代の問題だ。もう一因は、ボットと会話することが難しいと感じる点にある。いまなお、一般的な会話の流れに十分ついていけず、途中でつまずくことが多いからだ。さらに言えば、私も——多くの人と同様に——単純に人と話すのが好きなのである。
だが、状況は変わりつつある。UneeQのような企業は、アバターとやり取りすることで、質問への答えを得ることを単純により容易にしている。また、ユーザーや発信者、顧客が望むなら人間と話す選択肢を提示できるほど賢い。
デジタルヒューマン:なぜ優れているのか
しかし、顧客や従業員との会話なら、AIが生成した音声だけで十分ではないのか。トムセットは、人々にはそれ以上のものが必要であり、人間は顔や会話に「自然に反応する」のだと言う。
「視覚と音声を備えたAIインターフェースは、信頼を生み、テキストや従来型のチャットボットよりも情報を理解しやすくする」と彼は語る。「私たちには本質的に、顔を見て、その相手が『安全』か、信頼できるかを見極めようとするようプログラムされているところがある。だからブランドに顔がつくと、人々の反応は変わる」
デジタルヒューマン:信頼と真正性
私が目にしている傾向として、AIをシステムに組み込むカスタマーサービスのリーダーたちは、電話に出たり質問に答えたりするボットが、最初に自分がボットであることを明確に名乗るようにしている。そして、希望すればすぐに人間へ切り替えられる選択肢を発信者に提示する。
トムセットは、自社が意図的に、ユーザーが人間と対話しているかのように装うのではなく、AIとやり取りしていることが分かるようにしている点を強調した。
「真正性は、透明性から始まる」と彼は言う。「人間とつながることが目標であって、人間になろうとすることが目標ではない。人々がブランドや、そのブランドがAIをどう使っているかを判断するうえで、真正性は極めて重要な領域になる」
現実世界のデジタルヒューマン
では、現実の場で本当に機能しているのか。トムセットによれば、間違いなく機能しているという。
オーストラリア政府に加え、彼はテキサス州アマリロ市を例に挙げる。そこではAIアバターが、住民と訪問者のやり取りを60以上の言語で支援している。
「外国語で自分のニーズを伝えるのにすでに苦労している人にとって、より簡単でフレンドリーなインターフェースになる」
さらに、同社が関わった別の企業では、アバターが労働力トレーニングで主要な役割を果たしており、顧客や同僚を模したAIアバターとの会話練習を通じて従業員を支援しているという。
現時点では、アバターを用いるシステムの構築、訓練、実装に必要なリソースの関係から、主に大企業の話になっている。しかしトムセットは、基盤となる技術の低価格化が進むにつれて、小規模企業にまで導入が広がると見ている。熟練労働の需要が高く、多くの職が埋まらない小規模組織において、既存の働き手の能力を拡張することになるという見立てだ。そして彼は、最終的にAIが組織とのやり取りにおける主要なインターフェースになると考えている。
「私たちは、デジタルヒューマンが従来のウェブサイトのナビゲーションに取って代わり、企業やサービスとやり取りするための主要な『フロントドア』になり得ると見ている」と彼は語った。「ウェブサイトをクリックして回る代わりに、摩擦を取り除くデジタルヒューマンと対話するのだ」



